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ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。

「運脳神経」のつくり方
深代 千之

 決定づけられたイメージってあるもので、ガリ勉タイプの秀才はどこかひ弱で運動をやらせたらまるでダメ、反対にガキ大将タイプといえば勉強はできないけれど運動会になると一躍ヒーロー。漫画の登場人物なんかでいうと、このパターンはお決まりみたいになっているようです。「天は二物を与えず」といいますが、人間にも長所もあれば短所もあり、完璧な人間などいないというテーゼみたいなものがあり我々もそれに納得していました。
 ところがそうではないようです。「運動ができる子供は勉強もできる!」という帯の文章が本書のテーマです。
 まず運動も勉強も脳でするのであり、習得の仕方も同じで、誤った固定観念が邪魔して努力する機会を奪ってしまったがための結果であると筆者はいいます。運動は筋肉の活動であるのは事実ですが、運動を記憶するのは筋肉ではなく脳であるからという論理は言われてみればなるほどと思います。勉強も運動もやればやるほど、脳の中のニューロンが活発に活動し、脳が活性化されるという点に関しては全く同じなんですね。
 考えてみれば、英単語の記憶をする際にも何度も何度もノートに書き身体を使って覚えたほうが、単語帳を見ているだけよりもしっかり記憶できた覚えがあります。勉強も身体を使ったほうが有効にできるというのも運動と同じこと。
 それでも現実に立ちはだかるのは「うまい(上手)」「下手」の問題。いい理論でも机上の空論では値打ちはありません。その大きな問題があるからこそ具体的な方法論が必要なのです。「運脳神経」という筆者の造語で、巧みな動きを脳の中にストックする方法を紹介しています。「運脳神経をつくる7つのルール」と題して必要な事項はきちんと書かれています。
 もちろんこの本を読んだだけで運脳神経ができるわけではありません。そこはやはりそれなりの努力が必要なのですが、後半からは基本運動の重要性が説かれ、次に運動に必要な要素を解説し、段階的に運脳神経の育成を図ります。
 丁寧な説明でとてもわかりやすいのですが、その内容はいい加減なものではなく意外と本格的なもの。覚えておきたいエクササイズもたくさんありました。小学生のお子さんをお持ちの親御さんに読んでいただきたいですね。
(辻田 浩志)

出版元:ラウンドフラット

(掲載日:2011-12-13)

タグ:教育 トレーニング    
カテゴリ トレーニング
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語感トレーニング 日本語のセンスをみがく55題
中村 明

 言葉というものは不思議な二面性を持ちます。細部に至るまでのキメの細かいルールにのっとって用いられる厳格な面もあれば、あいまいな部分や流行によって変化するという柔軟な一面もあります。とりあえずは文法に従って定型的な表現をしていれば、ある程度の意思伝達は可能になります。しかしながら言葉には奥行きの深さがあり、機械的な意思伝達に留まらないことは私たちも知っています。ちょっとした単語の選択や使いまわし1つによって同じ意味でも微妙なニュアンスの違いが生じます。またそれにより言葉を受け取る相手方が受ける印象が違ってくるから不思議でもあり、また難しくもあります。
 私たちが日常何気なしに使う日本語という言語も、その使い方がうまい人とそうでない人がいますが、それは言葉を選ぶセンスによりその違いが出てくると説明されます。同じ意味の言葉を話しても(書いても)細かいニュアンスまで正確に伝えることができたり、こちらの心情を理解してもらえたらと願うと同時に、最低限誤った言葉の使い方をしたくないと考えます。
 本書の目的は、そういった言葉の選択を的確にするトレーニングや意識付けであるといえましょう。堅苦しい感じはなく、クイズ番組を見ているような気軽な気持ちで読み進めることができるところに著者のセンスのよさを感じてしまいます。単語、文、文章をセンスよく使える人は作品全体にもセンスのよさがにじみ出てくるようにも思えます。
 筆者は「言葉のにおい」という表現を使いますが、言葉を生き物として捉えておられるのがわかります。生き物である以上、それぞれの言葉には性別や年齢もあれば性格まで持ち合わせていることを教えられました。
 社会で生きる私たちにとって自分の考えていること、感じていることを相手に正確に伝えるということはよりよく生きる上でとても重要な事柄です。言葉のトレーニングにより語感が高まり、的確な表現が身につけば素晴らしいことです。
 日本語がこんなにも豊かな言葉であったことに感動を覚えました。正しく使ってみたい言葉です。
(辻田 浩志)

出版元:岩波書店

(掲載日:2011-12-13)

タグ:コミュニケーション 言語 語感 トレーニング   
カテゴリ 人生
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温泉教授の湯治力
松田 忠徳

「いい湯だな~~」温泉につかると、そんな鼻歌の1つも出てきそうです。浮き世の喧噪から逃れて温泉に入ると身も心もリラックスするからなのでしょう。癒しブームとも言われますが、温泉こそが私たち日本人にとって癒しの元祖ではないでしょうか。そんな温泉の指南書ともいえる一冊。
 古来より身体をきれいにする目的のみならず、病気治療の目的があることは温泉を語る上で忘れてはなりません。日本書紀に湯治の記述があるというから驚きです。相当古くから温泉は病平癒に利用されていたようです。また日本人の温泉好きは神事に由来するという推論はとても興味深く読めました。
 古来、日本人の温泉好きは変わらないのですが、昨今の温泉ブームにより平成以降多くの温泉施設がつくられました。しかしその中には「温泉」とは呼べないまがいものの温泉があると言います。さらには昔からの温泉でも賞味期限が切れたものがあるそうです。まさか温泉に賞味期限があるとは思いませんでした。それならばホンモノの温泉とはどんなものか? 具体的なポイントを明らかにしてくれていますので、温泉選びの目安になるでしょう。私もかつて温泉宿に泊まって露天風呂を楽しんだのですが、上がったあと身体から発せられるカルキの臭いに気分を悪くし、興ざめした経験があります。本書を読んでそのカラクリがわかりました。次の機会にはきちんとした温泉選びができそうです。
 温泉に入るときの心構えまで書かれているのだから至れり尽くせり。「温泉教授おすすめ 全国の湯治宿145選」と題したデータベースまであれば、あとに必要なのはお金と時間だけ。
 裸で湯船につかっている光景がいくつも頭の中に浮かんできました。
(辻田 浩志)

出版元:祥伝社

(掲載日:2012-01-18)

タグ:湯治  
カテゴリ 人生
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手の日本人、足の西欧人
大築 立志

「足」という字を「あし」と読むのには「悪し(あし)」との関連があるという説があるそうです。ふだんあれだけお世話になっている「足」なのにイメージ的によくない印象があり、それは西欧とは違う日本の文化に由来する。そんな内容が多くの事例とともに解説された一冊です。
「手」を重んじる日本と「足」を重んじる西欧人という対立した機軸での展開は、ややもすれば結論ありきという強引さも伺えますが、おおむね納得できる内容です。「手の文化」と「足の文化」の違いは、私たちのあまりなじみのなかった欧米文化の謎を解いてくれるようです。大統領がマスコミを相手に話をするときデスクに足を乗せて話せば、おそらくほとんどの日本人は眉をひそめ人格を疑うに違いありません。ところがあちらでは、それが「親近感」をアピールするための手段として用いられるというのですから驚きです。グローバル化が進み世界中の垣根が低くなりつつある中で、現存する文化価値観の違いによる行き違い。欧米化が進んだと言われる日本においてさえ、まだまだ理解し合わないといけない事柄はたくさんあるようです。
 農耕民族と狩猟民族の違いという結論が、21世紀という時代に入ってなおしっかりと現代に受け継がれていることに興味深いものがあります。西欧人との違いを比べるというよりも日本人の文化のルーツをここに見つけることができそうです。植物を食料として確保しえた生活環境だからこそ、動物を殺してはいけないという「殺生戒」という思想が生まれたのではないかというくだりは宗教観にも及びます。
 エピローグで筆者が面白いことを述べておられます。「『西洋と日本との間には手足に対する見方があるに違いない』という考えに取り付かれて、冷静な目を失ってしまったかもしれない」と断った上で、文化の違いを明らかにするということは、自分が常識だと思っていることを疑うことであるといわれます。要するに自分との違いを非難することではなく、相手の歩んできた歴史を知ることによりさらに深く相手を理解するという目的が優先すべきなんだろうと思います。
(辻田 浩志)

出版元:徳間書店

(掲載日:2012-01-19)

タグ:比較文化  
カテゴリ 人生
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人はどうして疲れるのか
渡辺 俊男

 「若いころと違って年を取ると疲れる」なんて言葉を耳にします。私だって何度となくそんなことを言ったことがあります。若いころのほうが運動量も多いのに、どうして年を取ったほうが疲れるのか? 若いころとは違い、責任の重い立場にあるから疲れるのか? そうなると疲れは身体の問題ではないのか? 日曜日にゆっくり休んだのにどうして月曜日の朝は疲れているのか?──「疲れ」というものを改めて考えてみると不思議なことがたくさんあります。「疲れ」とはいったい何なのか? 本書は日常当たり前に起きる現象をさまざまな角度から分析しています。
 「疲れ」にはマイナスのイメージがあります。誰だって疲れるのは嫌だし、疲れ知らずで動けたら素晴らしいかもしれません。しかし疲れなければ休息をとることもないでしょう。そこに待っているのは「破たん」であることは容易に想像がつきます。その流れにブレーキをかけるために「疲れ」が存在するのであればそこに積極的な価値を見出すことができると筆者は説きます。動くことこそが動物のアイデンティティであり、動くことにより食物を獲得し、エネルギーを得て活動ができるのですが、「動く」「疲れる」「休む」という要素こそが生命活動のシステムであり、これらの要素のバランスが効率をもたらすということを知らされました。
 現代社会における我々を取り巻く環境は大きく変化し、疲労というものの質も、筋肉を中心としたものから感覚器官の疲労や精神的な疲労などに変わりつつあり、ますます「疲労」というものの正体がつかみづらくなってきたとあります。時代の推移により「疲労」も変化するというのは興味深いところです。
 こんな引用があります。「C・ベルナールは『生きていること』を定義して、『下界の環境の変化に対して、生体の内部環境の生理的平衡状態(ホメオスタシス)を保つ努力である』と言いました」。動くものが動物であるかと言えばそうではありません。機械は動きますが自ら下界の環境変化に対して恒常性を持ちません。これこそが動物と無生物との分水嶺。ここで筆者は、安定した変化のない環境に馴らされて生体の内部環境を変化する力を失うことは、生物としての活力を失うことと言い切り、そのことが「死」に向かうことであると指摘します。安定した楽な生活を求めようとする私たちに対して警鐘を鳴らすと同時に、活力に満ち溢れた生活を営むためのヒントを与えてくれているように思えるのです。
 最後の疲労回復法の章も必見です。疲労を軽く見て病的な状態に陥ることもありがちです。よりよく生きることは上手に「疲れる」ことである。そういった発想で日々を暮らしてみると、自分の心や身体との新しいつきあい方が見つかるような気がするのです。
(辻田 浩志)

出版元:筑摩書房

(掲載日:2012-02-07)

タグ:生化学 疲労   
カテゴリ 生命科学
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ろくろ首の首はなぜのびるのか
武村 政春

 でたらめも真顔で力説すれば真実に聞こえる──世の中にはそういったことがいくらでもあります。そういった嘘に騙されないために勉強し、正しい情報や知識を得ながら、人は大人になっていきます。真偽の見極めができる大人が、真実ではないということを承知の上で嘘を楽しむことができれば、これは1つの遊びになります。現実的にはありえないことを筋道立てて展開することにより成立する文化は、いくつも存在します。小説もしばしばそういった手法をとりますし、架空の話に笑いという要素を含めると落語にもなります。言語ではなくものを使って虚偽を表現する手品も同じだと思います。真実は大切ですが、「真実ではないこと」のすべてが悪いということではありません。そこに遊び心があれば人々の心の潤滑油になることは皆さんご承知でしょう。
 前置きが長くなりましたが『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか』というタイトルは多くの人の興味を引くでしょう。ろくろ首は妖怪という架空の生き物(死んでいるかもしれません)であり、夜中に首が伸びて行灯の油を舐めるというストーリーは有名です。首が伸びるという摩訶不思議な現象について具体的な解説があるのならば一度は聞いておきたいと思うのは自然なこと。もともといるはずのない生物の実体を解明するという矛盾を容認する遊び心があれば、荒唐無稽な論理も楽しめるというのが本書の魅力だと思います。
 大人を騙そうというのですから、子どもだましではいけません。きちんとしたデータに裏づけされた整合性のある論理でないと読むに値しません。しかしご安心ください。各項目において生物のデータ、きちんとした科学的事実などを提示したうえで筆者による考察が展開されていきます。ここまで堂々と現実世界にないことを推論されると「なるほど」と相づちを打たざるを得ません。子どもの頃、疑問に思っていたことも謎解きされて、数十年たった今、胸のつかえが取れました。
 本書における登場人物は実に多彩。日本を代表してろくろ首・豆狸・かまいたちなどが登場したかと思えば、ドラキュラ・人魚・ケンタウロスなど西洋の物語に出てくる架空の生き物にまで話が及びます。古典的なものだけではありません。モスラや「千と千尋の神隠し」のカオナシまで登場します。ドラキュラは日光に当たると灰になるのはなぜか? ケンタウロスの持つ人間の胴体と馬の胴体。その中にはいったい何が入っているのか? ろくろ首の頚筋群の細胞はどのような構造を持つのか? 巨大化したモスラの悩みとは? とにかく奇想天外な切り口で彼らの正体を暴きます。
 底の浅い適当な理屈ではありません。用意周到というか膨大な資料を元にした研究結果といえるまでに昇華したでたらめです。力強く引き込まれました。
(辻田 浩志)

出版元:新潮社

(掲載日:2012-02-15)

タグ:生物学  
カテゴリ 人生
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イップスの科学
田辺 規充

「去年買ったクラブセット、いいなぁって言ってたけど、よかったら君に譲ってあげようか?」
「ははん…さてはもう飽きたな」
 皮肉っぽく言った言葉に遼一は気分を害したのか、目をそむけてクルリと後ろを向いた。本来お調子者で自信家の遼一にしては拗ねたような態度だった。
「そんなんじゃないよ…」
 彼の表情から、決して新しいクラブに心移りしたのが原因ではなさそうだと勇大は悟った。
「実は、やめようと思うんだ… ゴルフを…」
 言葉尻が聞こえにくかったのだが遼一の雰囲気からすべてが伝わってきたような気がした。あまりに突拍子もない遼一のセリフに
「え?」
という言葉にならない疑問詞だけが勇大の口からこぼれ落ちた。

 一番言いにくかった重大な発表を告げて多少心の落ち着きを取り戻したか、遼一はポツリポツリとその理由を話しだした。
「パターが打てないんだよ」
「打ち方がわからなくなったというよりも身体が硬直して動かないんだ…」
「無理に打とうとすればするほど身体が固まって、まるで金縛りにあったような感じになって…」
 わずかながら遼一の声はうわずっていた。
「半年前くらいからだんだんパターになると全く人が変わったみたいに動かなくなって…」
「ちょっと待って!」
 勇大は遼一の言葉を遮った。
「半年前といえば君が大会で優勝を遂げた、いわば君の一番よかったころじゃないか?」

 どうも話がかみ合わない。半年前遼一がぶっちぎりの優勝を遂げ表彰台に上る姿をうらやましげに眺めていた勇大としては眩いばかりに輝く彼の姿が今でも印象深い。それなのにそのころからパターが打てないなんてどう考えても辻褄が合わない。それだけではない。それ以降大舞台になればなるほど彼の勝負強さは磨きがかかり、破竹の勢いで連戦連勝だったのだからそういう要素は微塵も感じなかった。だからこそ遼一の告白はまさに衝撃であり、彼が嘘をついているだとさえ思った。
 しかし陽気で真面目な彼がそんな嘘をつくタイプでないことは一番わかっているつもりだったので、勇大の見ていた現実と彼が告げた現実の大きな矛盾に悩まざるを得なかった。
 どうやら思いつきの気休めの言葉では事態は変わらないだろうと感じた勇大は以前お世話になったレッスンプロに解決策がないかを尋ねてみることにした。
「一度先生に聞いてみるよ」
「だから諦めるのは待って」
勇大は遼一の目を見据えそういった。
 きっと言葉の力強さに何かを感じたのだろう。遼一は小さくうなずいた。

 翌日さっそくレッスンプロの大崎のもとを尋ねた。
「そんなことってあるんですか?」

 勇大は昨日のいきさつを大崎にすべて話した。
「よくあるんだよね。イップスってやつさ」
「一流選手がよくやるヤツで突然パターが打てなくなるんだ」
「どうやら自分自身に対する期待や周りからの期待がプレッシャーとなって襲い掛かり、精神的な呪縛が身体までを縛り付けるのが原因らしいね」
「イップスかぁ…」
 勇大は初めて知る言葉の底知れぬ怖さを感じながらつぶやいた。
「それで! あるんですか? 治す方法…」
 それを聞かなきゃここに来た意味がない。そんな思いで大崎の方に身を乗り出した。
「あるといえばあるし、ないといえばない」
 どうも大崎の真意が理解できずにキョトンとする勇大に
「ちょっと待ってて、いいものあるから…」
 勇大の肩をポンとたたいて大崎は事務所に戻り、一冊の本を持ってきた。
「これを読んでみなさい」
 そういって差し出した本には『イップスの科学』というタイトルが見えた。
「この本は自分自身がイップスになりパットが打てなくなった著者がイップスの克服方法を調べて書いた本だよ」
「しかもこの本の作者の田辺規充さんはプロゴルファーではなくて精神科医だから、専門家としての詳しい分析もされている」
「だからイップスを克服しようとするなら参考になると思うよ」
 勇大は目の前が明るくなったような気がした。
「それじゃ、治るんですね!」
 大崎は答えることができなかった。少し間をおいて話し出した。
「イップスはそう簡単に治るもんでもないし、これをやればうまくいくという方法もないんだ」
「ただイップスになって現役を退くゴルファーも多い中で、あの手この手で克服していくゴルファーもいるのは確かなことなんだよ」
「あとは本人がやるかやらないかだけかな…」

 釈然としない大崎の言葉がどこかに引っかかったまま『イップスの科学』を持ち帰って読んでみた。
「難しいんだなぁイップスって…」
「陽気で前向きな性格で闘争心が強くて真面目とくりゃ遼一の性格そのものだし、そういう人の方がイップスになりやすいなんて…」
「それってゴルフがうまくなる人の条件みたいなもんだし、うまい人ほどプレッシャーのかかる試合を経験する機会が多いはずだし…」
「ゴルフには意図してつくられたコース上のハザードとの戦いなんだけど、イップスってゴルフっていう競技が生み出した心のハザードじゃないか…」
 勇大は心底そう感じた。

「一度この本を読んでみろよ」
 遼一に差し出したのは昨日大崎からもらった本だった。
「イップスが治るかどうかわかんないけど、この本には克服するための手段がいくつも書いてある」
「もし君がやってみたいと思うなら試してみるといい」
「治るのか?」
 昨日大崎にした同じ質問が返ってきた。
「わからんよ」
「ただ昨日この本を読んでいるうちに何年か前に君がバンカーショットで苦しんでたことを思いだしたんだ」
「あのときは毎日バンカーの練習をずっとやってたよね」
「ああ、あの練習のおかげでむしろバンカーショットが得意になったんだ」
遼一は何年か前の苦しみを思い出した。しかし今では得意になってしまったから自分でもそんな苦労も忘れてしまっていた。
「どうやらイップスは心のハザードみたいなんだ」
 勇大は話を続けた。本のページをめくりながら遼一にひとつずつ説明をした。どうしてイップスになるのか? いろいろな自分でできる克服法や催眠療法・薬物療法の存在、イメージトレーニングの方法など…。本を読む必要がなくなるんじゃないかと思うほど延々と続いた。一生懸命に解説する勇大の目を見やった。こいつ真剣だわ…。話の内容そのものよりも勇大の迫力に圧倒されていたのかもしれない。

「君が新しいハザードを克服できるかどうかはわからない」
「でも今までそうやってゴルフがうまくなってきたんだろ?」
「できないんなら僕がクラブセットをもらってやるよ」
 遼一は差し出された本を黙って受け取った。もちろんクラブセットを勇大に譲るという気持ちはとっくに消えていたが…。
(辻田 浩志)

出版元:星和書店

(掲載日:2012-09-12)

タグ:イップス 
カテゴリ メンタル
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気象で読む身体
加賀美 雅弘

「腰が痛むからもうすぐ雨が降る」たまにこんなことをいう人がいますが、雨の日とか寒い日とかには痛みを持つ人は敏感になります。世間一般では漠然とこのような話を聞きます。ところが先端医療の現場で気象との兼ね合いで治療を進めるといった話はあまり耳にしません。基本的に気象という条件は考慮されることがないというのが現状のようです。本書は気象と人の身体の関係をテーマに具体的な問題について多方面から分析をしています。
 意外に古くから気象と身体の関係については研究があったそうです。20世紀の初めのころから世界各地でさまざまな試みがされていて、ドイツでは医学気象予報が現実にあるのを知り、驚きました。わが国でも気圧と喘息の因果関係の研究が進み、馴染みの深いところでは天気予報の花粉情報も気象と身体の関係をわれわれに教えてくれます。
 このように一部で研究が進む一方、本書では医学者が身体を気象から切り離し天気という条件に目を向けることがないのでさらなる実用化が進まないという問題点を指摘しています。曖昧なものは対象としないという現代医学の性格上やむを得ないかもしれません。また病気を治すということが第一義的になる半面、健康を維持するという予防医学がどうしても遅れがちになるという面も指摘します。
 それでもヒポクラテスの時代から気象と身体の関係について考えられ「生気象学」という学問が近年生み出され、気象と身体の関係が科学的に研究され、進行中とのこと。われわれの日常生活とは切っても切れない冷暖房と身体の話、自殺と季節の関係、誰もが知りたい脳卒中になりやすい環境など、読めば読むほど興味深い項目がいくつもあります。
 もっと知りたいことがたくさんあります。本書では研究が例示的に紹介されるにとどまり、なるほどと思うような理論や仮説はありません。おそらくまだまだ解明されていない事柄も多いのでしょう。そういう点ではさらに研究が進み体系化することを願わずにはおられません。研究対象があまりにも深遠なので困難な研究なのはわかりますが、まず多くの研究者の意識がそちらを向くことの必要性を感じます。
 読み終えたとき、人の身体も自然の一部ならば気象などの自然現象と切り離して考えることが非合理的だとさえ思えてきました。
(辻田 浩志)

出版元:講談社

(掲載日:2012-10-15)

タグ:気象 
カテゴリ 身体
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「退化」の進化学
犬塚 則久

「人類は万物の霊長である」誰がそんなことを言い出したのか知りませんが、人類が他の動物よりも優れているのは人間の生活環境の中においてのみ通用すること。すべての動物は生活する環境に適合すべく、進化と退化を繰り返してきました。それぞれの動物が自らのおかれた環境で有利に過ごし、子孫を残していくという点では、今生きている動物は皆優れていると言わざるをえません。
 本書は人類が今の姿に至るまでのプロセスを4億年前に遡り、どういう部位がどのように変化していったかを細かく説明します。「人類の履歴書」とでもいうべき変遷には現在においての謎が隠されているようです。現代において機能を喪失してもなお残る痕跡器官(男性の乳首など)や、作用が残り大きさが縮小した退化器官(親知らずや足の小指など)を変化した理由とともに数多く紹介されています。「人は元々二枚舌だった」とか興味深い「過去」があったり、数十年前まで退化したものと思われていた盲腸や虫垂もしっかりと働いていたという事実も近年明らかになったそうです。
 「退化」という言葉のイメージは後退するというネガティブなものでしたが、環境の変化に対応した「進化」の一形態であることが納得できました。無駄なものを捨てコンパクトな姿で過ごすことが将来を生き延びるための自然の摂理に適合した知恵であり、「退化」もまた重要な選択肢であると思うのです。「得る」ということと「捨てる」ということが同価値であると教わりました。
 過去の変化の理由を知ることにより、未来の人類の変化に対しても予測を立てることができたり、不都合な変化に対する警鐘を鳴らすことも可能なんじゃないかと思うのです。われわれ自身の身体に対する「温故知新」を見たような気がします。
 学問的な難しい本というよりも、知ると面白い豆知識がいっぱい詰まった一冊です。
(辻田 浩志)

出版元:講談社

(掲載日:2012-10-16)

タグ:進化 退化 
カテゴリ 生命科学
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他人を許せないサル
正高 信男

 最近「ガラケー」という言葉を初めて聞きました。「ガラパゴス携帯」の略語だそうで、他の地域とは独自の進化を遂げた動物が多く生息するガラパゴス諸島をもじり、他国にはない日本独自の進化を遂げた携帯端末のことを言うそうです。どうして日本の携帯電話だけが世界から孤立したような携帯電話ができたのか? 本書では日本人の持つ独特の社会性や対人関係を分析することにより、私の疑問を解消してくれました。元々は通話をするための機械を持ち運びできるようにしたものだったのが、メール機能がつき、カメラまでがついたと思ったら、インターネットやテレビ、果てはクレジットカードの役割まで付いた生活必需品にまで昇華しました。そのニーズは日本人独特の社会観にあると指摘します。
 日本人の社会観の源流は「世間」という単位であり、それが農業共同体から発生したものであり、世間では横並びの平等という欧米にはない独特の価値観をもつといいます。また所属する人々は世間の中で「ぬくもり」や「ふれあい」を得ることにより安心感を見いだすという日本人独特の情緒もふまえて的確に表現しています。中でもマルクスがこういう風土を「アジア的生産様式」とう表現したというくだりにイデオロギー的な興味を覚えました。
 ITという新しい表現環境にあって、そこで構築された社会は皮肉にも古来の農業共同体から発生したコミュニティーと同質の「世間」であり、それを「IT世間」と名づけ日本人の昔とかわらない社会性、さらにはそこに属する個人の心理にまで言及しています。
このような昔ながらの価値観を持つ日本人の間で急速に広がった携帯電話を中心としたIT世間における弊害も具体的に指摘はされていますが、やや強引な印象を受けてしまいました。携帯やインターネットなどのオンライン上でのコミュニケーションに振り回され、支配されているとの指摘には納得できる面も多いのですが、戦後の日本人において変化しつつある社会性や価値観などその他の原因についても考えるべき点もあるのではないかとも思うのです。
 それにしても日本独自の進化を遂げた携帯電話。使いこなしているのか? あるいは使われてしまっているのか? 自問自答せずにはおられません。また掲示板・ブログ・チャット・SNS・プロフ、最近ではツイッターに至るまでオンライン上でさまざまな情報伝達やコミュニケーションの手段が生まれました。われわれはそこで何をしたいのか? あるいは何を求めるのか?
 もう一度見直してみたくなりました。将来のコミュニケーションについて考えさせられる一冊です。
 着眼点の面白さ、目まぐるしく進化を遂げるIT技術の中でも昔と変わらない日本人の気質、流れる川の中で木の葉の行方を見ているかのような話の展開。一気に読んでしまいました。
(辻田 浩志)

出版元:講談社

(掲載日:2012-10-16)

タグ:コミュニケーション 
カテゴリ その他
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「遊び」の文化人類学
青柳 まちこ

「遊び」をテーマに書かれた本ではありますが、意外なほどその内容に遊びはありません。むしろ純粋なる学術的研究発表の性格が色濃く出ます。
 本書を語るにあたってオランダの歴史学者ホイジンガとフランスの社会学者カイヨワの存在は無視できず、彼らの研究が下地になっているともいえるでしょう。ただ筆者はホイジンガの「ホモ・ルーデンス」ではヨーロッパの文化に立脚した視点にとらわれて客観的評価はできないと指摘したうえで、独自の視点で「遊び」を評価・分析をしています。確かに本書は筆者の主観的要素を排除しているようなのですが、その分無機質な印象を感じました。読み物として捉えた場合、読み手が何を求めるかによっても両者の評価は変わるように思います。
「遊びとは何か」という命題から本書ははじまりますが、「競争」「表現・模倣」「偶然」「めまい」という要素を基軸とするとするカイヨワの「遊び」の定義づけをベースにしてさらに深く分析を進めます(批判的な部分もありますが)。
 すべての行動から動物として必要な生存や種族保存などを目的とする行動を除いたものを余暇行動として、それを遊びと定義するならばその範囲はあまりにも膨大になります。そういった広範な「遊び」をいくつかの要素に分類するところは説得力十分。細やかな分類と具体的な例を挙げての評価は世界中いろいろな形式で存在する遊びを整理しています。そしてそれらの遊びがどのように伝播していったかという遊びのネットワークも論じられ、多方向からの視点による切り口で解明されます。
 納得しつつ読み終わって、1つ疑問が生じました。本書が書かれたのは1977年なのですが、当時と今とでは情報の流通のシステムが変わりました。ネット社会になって近年社会も急激な変化を見せました。はたして本書の定義が今も変わらず当てはまるのだろうかということです。ホイジンガやカイヨワのころと青柳氏のころでは時代背景が異なります。それと同じように現在と昭和中期とでは背景の差は歴然です。「遊び」の定義にも時代背景による考え方の差を感じたのですから、今という時代においてまた違った要素も芽生えているかもしれません。「遊び」と「文化」が限りなく近いものであるとするならば、そういう可能性があるようにも思えるのです。21世紀という時代の遊びはどのように評価されるのだろう? そんな興味がわいてきました。
(辻田 浩志)

出版元:講談社

(掲載日:2012-10-16)

タグ:遊び 
カテゴリ その他
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骨の健康学
林 泰史

 一般社会で「骨」というものに対してどういう認識を持っているかを考えてみると、体格の基本をなし、身体の形を形成するもの、あるいは身体を守るためのもの、その程度の感覚で捉えられているのではないかと想像します。ところが本書ではもっと多くの役割を持ち、骨以外の存在に対しても深く関わる、そんな骨の知られざる正体に迫ります。多少は骨のことを知っているつもりだった私も、実際は知らないことだらけだったというのが本当のところ。
 骨の代謝のメカニズムが実に詳しく解説されています。また骨といえばカルシウムを思い出しますが、カルシウムが骨以外の身体の部分で大活躍するという事実と、そのカルシウムの量をコントロールするのに骨が関わるという重大な機能は世間ではあまり知られていません。
 また近年積極的にカルシウムを摂取するという呼びかけもありますが、カルシウムという材料だけでは骨はつくられず、せっせと取りこんだカルシウムも場合によっては排泄されてしまうということは私たちも覚えておかなければなりません。正しい知識で骨をつくる方法を習慣化しなければならないわけです。偏った情報もあり、カルシウムを取り入れることだけに踊らされた方も少なくないように思いますが、骨をつくるためには「カルシウム・ビタミンD・運動」という3つの要素を備えなければいけないことも書かれています。
 その上で、骨粗鬆症を予防法や骨の病気などの具体的な骨の問題を紹介してあり、面白そうなトピックスを抜粋して紹介した本というよりも、「骨の基本書」としての性格があります。あるいは豊かな骨を形成し健康に過ごすための指導書といってもいいかもしれません。
 私はいつも本を読むとき、重要な個所にはアンダーラインを引き、目印に付箋を貼る習慣があります。本書を読み終えたときの付箋の多さには驚きました。250ページ足らずの本書はあまりにも内容が濃かったようです。今後も骨のことを調べるときにはこの本を開くことから始まりそうです。
(辻田 浩志)

出版元:岩波書店

(掲載日:2012-10-16)

タグ:骨 骨粗鬆症 
カテゴリ 身体
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チェアウォーカーという生き方
松上 京子

「チェア(椅子)」「ウォーカー(歩く人)」初めて聞く言葉ですが筆者の作った造語のようです。車椅子に乗る身体障害者ということですが、どことなく軽快な印象があります。本書は25歳のときバイク事故で両足が不自由になったひとりの女性の生き様がありのままにつづられています。
 突然襲いかかった耐え難い現実を、葛藤の中で素直に受け入れ、そこから自分の価値を見いだし積極的な生き方で自らの幸せを拓いていく様が描かれています。
 バリアフリーという言葉は近年になって耳にする機会が増えましたが、段差をなくすことや手すりをつけるなど物理的な物だけではなく、同じ社会に生きる人の手伝おうとする気持ちや共に楽しく過ごそうとする精神にこそ真のバリアフリーだという問題提起がここにあります。 海外におけるバリアフリーということに対する個々の意識については考えさせられます。「手伝ってほしい」「手伝いたい」お互いにそんな気持ちはあっても現実には口にして実行することに気恥ずかしさを感じたり気後れしたりすることも多いはずです。障害者側は出来ることと出来ないこと、さらには手伝ってほしいことを明確に告げた上で積極的に社会参加すれば生き方も拓けていくことを示し、また同じ社会に生きる人がどのように障害者に接したらお互いに気持ちよく手助けできるかのヒントも筆者の体験談から教えてくれます。
 本当のバリアフリーとは何か? ともすれば暗くなりがちな話題を力強く明るく展開していく内容には心惹かれるものがあり、読むにつれて勇気がわいてくるようです。それが筆者の人間としての魅力なのだと思います。
 理屈ではなく心で読んでみたい・・・。そんな素敵な一冊です。
(辻田 浩志)

出版元:小学館

(掲載日:2012-10-16)

タグ:障害者 
カテゴリ 人生
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皮膚は考える
傳田 光洋

 いつも見ているヒトの身体って、よく考えてみればその大半が皮膚だったりします。知ってはいるもののそれ以外の組織について目に触れるものは髪や爪、あとは眼球の一部くらいのものかもしれません。我々が視覚や触覚で身体だと認識しているものは皮膚についてだけと言ってもいいでしょう。その皮膚についてもせいぜい身体のパッケージというくらいのイメージしかないのが正直なところであり、それ以外のさまざまな機能についてはあまり関心もなく知らないことが多いのが実際のところ。本書は知られざる「皮膚」の役割からその重要性を教えてくれました。
「内臓」に対して皮膚は「外臓」であると興味深い表現を使われていますが、臓器としての皮膚の役割についての説明により、皮膚に対する認識を新たにしました。「保護膜」としての皮膚は我々も知るところですが、病気で内臓を摘出しても死ぬとは限らないが、皮膚がヤケドなどで三分の一ほど失われると死に至ると説明されます。そういわれると皮膚と内臓の重要性は同等のものとして考えるべきだと再認識しました。ともすれば大切にしまわれた内臓と外界にさらされた皮膚とだったら、どうしても内臓のほうが価値が高いように考えがちですからね。
 冒頭から皮膚の重要性を説かれた後に皮膚の機能が明らかにされていきます。免疫と皮膚の関係についてはアトピーなどの問題点に言及します。それだけではありません。ドーパミンなどの神経伝達物質の合成や分解の機能があるといわれたら、まさかと思うのが普通だと思います。そのほかホルモンとの関係に深く関与しているという予想だにしなかった真実が書かれています。さらには皮膚は光を感知する能力があるのではという仮説にも驚きました。
 「皮膚は考える」というタイトルですが、脳と同じ機能を持ち精神をつかさどるという要素もわかってきたそうです。当然皮膚は人の心にも影響があるという最後の部分はインパクト十分。軽く見ていた皮膚もあまり知られていなかった役割を理解すれば、その付き合い方も変わり、快適な生活を送ることが可能になるのではと感じました。
(辻田 浩志)

出版元:岩波書店

(掲載日:2012-10-16)

タグ:皮膚 
カテゴリ 身体
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アンチエイジングフィットネス
Marilyn Moffat Carole B. Lewis 福井 勉


 トレーニングをするということはスポーツをするため。そんなイメージを持ってしまいがちですが、トレーニングをする目的は多岐にわたります。本書はアンチエイジング(抗加齢)を目的とした身体づくりの指南書といっていいでしょう。
 サブタイトルが「40歳からはじめる加齢に負けないからだづくり」とあります。あまりトレーニングに縁がない人たちにとってハードな運動は敬遠されがちですが、アンチエイジングを目的としたフィットネスなので敷居は高くなく入りやすいのではないでしょうか。
 加齢によって起きる身体の変化とは何かを明確にしたうえで、それらに対する具体的な方法論が写真つきで説明されていますので、どちらかというと実践しながら読み進めるというのが正しい読み方ではないかと考えます。そういう意味では単に知識を得るための本ではないと申し上げておきます。「姿勢」「筋力」「バランス」「柔軟性」「持久力」と加齢による身体の変化を5つの要素に分類してあります。私の周りでもアンチエイジングのためフィットネスクラブに通う人たちはたくさんいますが、やっていることといえばほとんど筋力トレーニング。おそらく本書に書かれているような情報が不足しているのでしょう。残念なことではありますが、一般的な私と同じ世代の知識や情報ってこんなもんだろうと思います。アスリートではなくごく一般の中年と呼ばれる人たちにとって偏った運動に陥らないための、正しい身体づくりの道しるべとなる一冊になりそうです。
 この本を読みながらできる限りのエクササイズをやってみました。いたるところに筋肉痛が出たのはご愛嬌。しかしこれは私の身体が加齢により使えなくなりかけていた部位がたくさんあるという証拠でもあります。それでも「身体の評価」という項目ではなんとなく実年齢よりも若いのではないかと喜んでいます。汗をかいて体験したい本です。
(辻田 浩志)

出版元:ラウンドフラット

(掲載日:2012-11-21)

タグ:高齢者 
カテゴリ 運動実践
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先を読む頭脳
羽生 善治 松原 仁 伊藤 毅志

 天才棋士羽生善治氏をモデルにして氏の将棋における思考を解き明かした内容。羽生氏本人の解説と伊藤毅志氏・松原仁氏による専門的な分析が並行して1つのテーマについてそれぞれの立場からの見方を示しています。なんとなく「Q&A方式」のような印象があり、まるで羽生氏の頭脳の秘密に対する謎解きというスタイルに引き込まれました。
 まず羽生氏の印象は悟りを開いた高僧のように実に穏やかに淡々とご自身の将棋観を解説なさいます。泰然自若というか自然体というか、勝負師というようなギラギラした情熱というものも感じず、極めて冷静な自己分析を披露されます。そこには伝説の棋士坂田三吉のようなドラマ性はまったくありません。逆に人間羽生善治の「静なる凄み」さえ感じてしまうのです。
 ここで述べられた羽生氏の解説をさらに専門的な知識をもとに分析し羽生氏の思考のエッセンスを見出します。羽生氏の真似はできないまでも我々にも参考になるような情報がいくつか提供されます。
 これら異質な切り口から見た「将棋の思考」がパラレルワールドのように最後まで続くのですから読んでいても息が抜けません。なぜならば羽生氏の思考のなぞ解きを早く見たいからです。
 「頭のいい人になりたい」子どもの頃からそんな願望は誰しもあると思います。「先を読む力」はまさにもっとも得たい能力の1つ。本書にはそのヒントや秘密がたくさん記されています。私に実行できるかどうかは別としても…。
(辻田 浩志)

出版元:新潮社

(掲載日:2013-03-13)

タグ:将棋 
カテゴリ その他
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ないもの、あります
クラフト・エヴィング商會

 人のイマジネーションってすごいと思います。「想像」とは必ずしも虚構であるとは限りません。物質的にはなくても頭の中で想像すると確かに存在することってたくさんあると思います。「-1」なんて数字は物質的には表すことはできないと思います。もちろん証明は可能でしょうが「物」としてないものはないのです。人の感情や意識なんて「物」としてはありません。しかしそれを否定する人はいないはず。
 「堪忍袋の緒」「口車」「思う壺」「冥土の土産」など書いてみれば「物」として存在しそうなんですが決して存在しないもの、それを商品として売ろうっていうんですから何やら怪しげ。「クラフト・エヴィング商會」という架空のお店を立ち上げ想像の産物を売るという企画。あくまでも本書は商品カタログの体裁となっているのがポイント。
 絶妙のセールストークで次々に商品を売り込んでくるんですから読者の私たちも心して聞かなければいけません。言葉巧みな売り込みは一流セールスのそれ。私もかつて営業のお仕事をしていましたが、そのとき先輩や上司から教わったのは絶対に嘘はダメということ。メリット・デメリットをきちんと説明した上で取引相手が納得しないと長期的な取引はしてもらえないと叩きこまれました。もちろん本書のセールストークもそのあたりはきっちり押さえてあります。本当にこんな商品があったら欲しいなと思った時点で、術中にはまっていたんでしょうね。
 商品となった言葉の本質にあらためてうなずくばかり。想像力の豊かさと淡々と語られる商品説明には思わず身を乗り出してしまいます。こんな面白い商品カタログは初めてです。
 最後に掲載された赤瀬川原平さんのエッセイ「とりあえずビールでいいのか」も秀逸。
(辻田 浩志)

出版元:筑摩書房

(掲載日:2013-09-06)

タグ:遊び 言葉  
カテゴリ フィクション
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にんげん見本帖
西川 右近

 筆者西川右近氏は日本舞踊家で名古屋西川流の家元。本書は筆者の交友録でもあり、関わった人々により成長していく過程を記した自叙伝とも言えます。「人は影響されつつ影響する」ドイツの学者の言葉だったように記憶していますが、人は生まれて大勢の人に出会い、たくさんのことを学びます。その積み重ねによりひとりの人間としての人格を形成していくといった意味ですが、ここに登場する人物との出会いとそれぞれのエピソードが西川右近という人間を育てたんだよ、そう言いたげな内容だと感じました。そして多くの個性的な人物との関わり合いこそが舞踊家として「今」をつくり上げた感謝の念から書かれた作品のようです。
 こういった世界では一般人の感覚とは違います。住む世界が違うといったほうがより正確でしょう。ここに登場する人物ひとりひとりが普通はお目にかかることのないお方ばかり、常識はずれというか破天荒というかスケールの大きさを痛感するとともに、それぞれの登場人物がひとりずつ物語になりそうなお方ばかり。こんな人の中で育ったらどんな人間になるのだろうと、たじろぎそうになるほどの面々。それだけにエピソードは魅力がたっぷり。芸の世界に生きる人々の遊び心・心意気・駆け引き・粋…。豪快で愉快な人間模様がリアルに描かれています。
(辻田 浩志)

出版元:創美社

(掲載日:2013-11-19)

タグ:舞踊 
カテゴリ 人生
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隠居学 おもしろくてたまらないヒマつぶし
加藤 秀俊

「脈略のなさ」それが本書の真骨頂なんでしょう。興味深い話題が延々と続くわけですが、それら1つひとつにつながりはありません。なんとなれば隠居にはこれをやらなければいけないという目的がないからです。
「現役」にはそれぞれすべきことがあります。現役を退いた隠居という立場においてはそういった義務的な縛りがありません。だからこそ思い浮かぶままに好きなことを考えられるし、他愛もない事柄に興じることもできるのでしょう。
 それでも、今まで人類が築き上げてきた科学的知識の一片一片は思いつきから始まり、それらが連鎖して人類の財産とも言える知識に膨れ上がったのであるという主張に、筆者の隠された気概を感じずにはいられません。
 本書に漂う一種の解放感は現役の私たちから見ればこの上なく自由にも見えますし、あるいは話の展開の身勝手さに辟易する人もいるんじゃないかと想像してしまいました。本書をどう捉えるかも自由。いずれくるであろう自分の隠居生活を頭に描きながら筆者の世界に没頭するもよし。雑学を身につけたいという目的を持って読むのもよし。自分なりの筆者とのスタンスで楽しめると思います。
 目的があり必要に迫られて覚えようとしたことより、興味本位で調べたことの方が案外覚えているもの。そういった知的好奇心をくすぐる内容が盛りだくさんの一冊です。
(辻田 浩志)

出版元:講談社

(掲載日:2014-02-04)

タグ:隠居 好奇心 
カテゴリ エッセイ
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からだことば
立川 昭二

 読み終わってから筆者の経歴を読んで勘違いに気付いたのですが、筆者立川昭二氏は医師ではなく歴史家だそうです。しかも病気や医療についての文化史がご専門なんだそうです。それを見てようやく納得がいったのですが、本書の切り口は医学者のそれではなく、文化と身体の関わり合いが主体であるのですが、あまりにも医学的内容の多さにてっきり医師であると思っていました。
『からだことば』は日本における身体の部位を使った言葉から、日本人の心や文化をもう一度見直してみようという内容です。身体は単なる物ではなく、人の生活そのものでもある。そんな作者の根底の考えが伝わってくるようです。身体は生きるために必要な要素であることはいうまでもありませんが、人としての生活を送る上でのメンタリティーが言葉に託されたものが「からだことば」であると知りました。
 読み進めるうちに、日本語の持つきめの細かい感性に出会います。「肌」と「皮膚」の使い分け、「手」と「足」に対する価値観、「みる」「きく」という感覚の分類と奥行きの深さなど、改めて日本語の「ツボ」が解き明かされていきます。普段何気なく使っている日本語に、これだけ日本人らしさが隠されているとは思いませんでした。全体から見渡したからだことばに対する考察にはうなるばかり。
 ただ1つ気になったのは、現代の日本人が言葉の変化とともに「古き良き」日本人のメンタリティーを失いつつあるのではという危惧をされていますが、生活様式も文化も変化するのが当たり前で、百年や千年という単位で考えれば変わらないほうが不思議であると思います。自分が育った時代背景に懐かしさを持つのは悪いことではありませんが、よくも悪くも移り変わりは仕方のないもの。悪い面だけを見て判断するのもいかがなものかと思います。それもいずれ歴史が答えを出してくれるだろうと思います。
(辻田 浩志)

出版元:早川書房

(掲載日:2014-03-10)

タグ:からだことば 
カテゴリ 身体
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人体は進化を語る あなたのからだに刻まれた6億年の歴史
坂井 建雄

「自然に」という形容動詞は「ひとりでにそうなるさま」という意味もあり、「なんとなくそうなってしまった」というニュアンスを感じてしまいますが、本書を読んでいると「自然に」という言葉にまったく逆の印象が刻みこまれてしまいました。
 自然に存在するものにはすべて何らかの必要性があり、そして地球上に生物が誕生して以来、常に目まぐるしい環境変化に対応すべく進化する、生物全体の生きようとする力を感じずにはいられません。だから「自然に」という言葉には「運命的に」という意味合いも含めるべきだと思ってしまうのです。
「胃は消化する器官ではなく食料を保存する器官」「頭蓋骨は元々鱗だった」とか、人類の進化のエピソードは下手なフィクションよりも面白く読めます。生物の進化というマクロ的観点からの切り口は、我々が知らなかった人の身体のプロフィールを紹介してくれます。
 人体の不思議について書かれた本はたくさんあります。が、それらの多くは「今の人体」についての解説ですが、本書ではなぜそうなったのかという部分に重点が置かれているように感じました。いわば人の身体の歴史とでもいうべきものでもあり、その進化によりどういうメリットがあったのかについての解説には納得。なぜならばそれこそが人類が人類として生き残ってきた証なのですから…。
 本書は単なる人間の進化を示したものではなく、哲学すら感じてしまうのです。

(辻田 浩志)

出版元:ニュートンプレス

(掲載日:2014-10-03)

タグ:進化 生命  
カテゴリ 身体
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なぜ人は走るのか ランニングの人類史
Thor Gotaas 楡井 浩一

 「ランニングの人類史」というサブタイトルの通り、「走り」の歴史が詰まった本です。古代はまさに命がけで走っていました。地球環境が変わり森の多くがサバンナになった時代、サバンナを走り獲物を追いかけたことが、活動領域という点において森にとどまった類人猿との決定的な分かれ目になったそうです。人類の繁栄に少なからず「走り」が関わっていたようです。
 時代は変わり、交通手段がなかった頃、伝令という重要な役割が「走り」に課せられ、そこで命を落とした者を記念してレースという競技の起源だそうですが、その残酷さ過酷さゆえに人々の熱狂を生み、今に至るまで人気競技の座を得ていることには考えさせられました。
 レースになり勝敗がかかる以上、人々は勝つためにあらゆる手段を駆使しました。お金も絡んでくるし、ドーピングの問題も発生するし、靴や時計などの関係用具の発達など、ランニングの光の部分と影の部分の双方が絡み合って様々な歴史を刻んできたようです。走りの歴史は人類の歴史とぴったり寄り添っているようにも見えます。
 日本で人気の駅伝という競技は個人主義に走らず団体の和を重んじる日本人の国民性ゆえに定着したようです。そういう意味では「走り」には文化も反映されるようです。
 歴代の有名ランナーのエピソードから一般人のジョギングの歴史まで、事細かに紹介されています。まさに「走りの百科事典」といえる一冊です。
(辻田 浩志)

出版元:筑摩書房

(掲載日:2015-07-22)

タグ:ランニング 歴史  
カテゴリ その他
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中国スポーツマッサージと体育療法
駱 勤方 ベースボール・マガジン社

 世界中には数多くの手技療法がありますが、人間の身体の仕組みは国々によって大きく異なるものではありません。目の付けどころというのは手技療法においてもある程度共通したものが多いというのが私の率直な印象です。ましてや歴史の古い手技になれば、エッセンスとなるものも長い歴史により精査されたものが残るのが必然だと思います。
 理由づけや説明は異なったものであっても、実際に施術すべきポイントは洋の東西を問わないかもしれません。
 中国スポーツマッサージの手法が紹介されていますが、特殊なものという印象はほとんどなくて、西洋のマッサージ技術と親和性が高く、誰にでも取り入れることが可能な方法ばかり。ツボという中国独特の概念がオリジナリティーを醸し出しますが、紹介されているテクニックは初心者でも使えそうなものになっています。
 体育療法も中国風エクササイズと捉え気軽に取り入れやすいものばかり。ウォーミングアップやクールダウンに使えば、目先も変わって面白そうです。同じことばかりやってマンネリ気味なときに挑戦していただくと新鮮な気持ちで取り組めそうです。
 イラスト入りの解説ですからとてもわかりやすいです。100ページ足らずですが重要なポイントは押さえられていると思います。トレーナーでも選手でも気軽にお読みいただけるでしょう。逆に体系的に勉強したいという方には不向きです。

(辻田 浩志)

出版元:ベースボール・マガジン社

(掲載日:2016-01-14)

タグ:中国 体育 マッサージ  
カテゴリ スポーツ医科学
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すぐ役に立つ 脳と心の介護予防フィットネス
石井 千惠 小関 潤子 松浦 亜紀子 梅田 陽子

 老いと死はいつかは受け入れなければなりません。それを知らぬ人はいないはずなのに、具体的に考えたり対策を立てている人ってごく少数のように見受けます。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」といいますが、喉元に来る前にも熱さを認識していない人が多いのも事実。結局、自分がその事態に直面しないと意識できないというのが一般的なのでしょう。私も認知症になった母親の介護を初めて6年になりますが、本人はもとより家族の負担も少なくないのは承知しています。老いと死から逃れられないのは仕方のないこととしても、それに抗うことをあきらめてしまうのは別問題。どう抗ってもダメなケースもありますが、予防することで老化による問題を少しでも軽度にとどめられる場合もあるはずです。介護度がひとつ上がるだけでも本人や家族の負担は大きく変わります。
 ある介護のセミナーを受けたとき、私が後期高齢者になる20年後には認知症の方が爆発的に増えるという予測を聞きました。本書にも同じ指摘がありますが、そのときの介護制度が決して見通しのいいものではないことは予感しています。
 本書は介護予防の在り方をわかりやすく解説したものです。広がりつつある介護予防が現在どのような形で現場で行われているかの紹介から始まります。抽象的な話ではなく、実際に行われているそれぞれの現場の様子や体験談がいくつも紹介されていますので、正確に雰囲気が伝わってきます。認知症と老齢期のうつにテーマを絞っていますが、認知症やうつの知識についてもきちんと説明されています。
 本編はやはりエクササイズ。目的別にプログラムが整理され、どういう目的でそれぞれの運動をするかきめの細かい解説が記されています。認知機能向上エクササイズ「e-エクササイズ」は必見。こういうところまで研究されているのかと驚きました。
 その他にも介護に携わる方にとって必要な知識が満載。介護制度というのは予算の都合で頻繁に制度が変わります。将来的に介護予防にシフトされるとき本書の知識は役に立つでしょう。
 基本的に介護職に従事されている方を対象に書かれたものだとお見受けしますが、願わくば介護職に就く方だけではなく、近い将来身近な問題になるであろう私たち50代や60代の人にも読んでいただきたいです。介護される立場になって慌てるよりも、先に手立てをしておきたいという方にも役立つ本だと思います。
(辻田 浩志)

出版元:誠文堂新光社

(掲載日:2016-05-12)

タグ:介護予防 
カテゴリ 運動実践
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つらい腰痛は「浮かせて」治す!
中川 忠典 日本FMT腰痛治療協会

 日本FMT腰痛治療協会の治療法を紹介した本です。今までこの手の本をいくつも読んできましたが、その多くは現代医療に対する批判がやたら多かったりするものや、作用機序や原理原則が乏しいわりに成功例だけをことさらに主張するものだったりしました。正直なところ、そういった先入観を持って読み始めたのですが、「腰痛診療ガイドライン」など信憑性の高いものからの引用が多く、最新の医療現場の状況を詳しく解説されていたので、見る目が変わりました。
 「浮かせて」というタイトルの文言ですが「プロテック」という治療装置を使った治療だそうです。「高い高い」をされているような状態で重力から解放するという新しい試み。ただその器具だけに頼るのではなく、筋トレ・ストレッチとの組み合わせやブロック注射との併用などの例も紹介されていました。
 抗重力という視点は近年注目されていますが、それを基軸にした新しい治療法だと感じました。しかもロコモティブシンドロームなど自分の体重を支える余裕がなくなることに対する問題提起もなされていて、決して「浮いている」だけで腰痛が治るのではないという点もとても大切なことで、体幹トレーニングを中心としたケアに関しても解説があります。
 今後どのくらい効果があがるか期待したくなる治療法です。

(辻田 浩志)

出版元:現代書林

(掲載日:2017-04-21)

タグ:治療 腰痛 
カテゴリ 身体
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感じる力でからだが変わる 新しい姿勢のルール
メアリー・ボンド 椎名 亜希子

 機械と違って人の身体は融通が利きます。配線一本、部品一つの故障や欠落でも動かなくなることもある機械に対し、人の身体はそれなりに動いてくれます。それだけ一つの動きに対しても様々な部位や組織が働くことにより、多重にサポートすることが多々あります。
 逆に身体をうまく機能させることができなくてもそこそこ動いてくれるので、問題意識がないまま何年も何十年も好ましくない動きや姿勢を続けてしまうことにより、関節や組織に負担をかけ疼痛を伴う機能障害を起こすことが少なくありません。
 「正しい身体の使い方」とか急に言われてもたいていの方は戸惑われることでしょう。人は目的の動きは意識できても、個々の身体の使い方なんて意識したことがありませんので、何が正しくて何が間違っているかを知らなくて自分の身体を使っているのです。
 本書は自分で気づかなかった自分の身体を知るための問題提起をしてくれます。人の身体について、解剖生理学では便宜上個々のパーツを学びますが、それぞれの組織のつながりを解き明かすことで身体の機能的な使い方を示しています。
 著者の意図するところは、ご自身の知識をそのまま読者に与えるのではなく、様々なエクササイズを通じて読者が自分自身でそれを感じることを促します。なぜならば知識として知っているだけでは意味がなく、あくまでも体験することで実際に正しい身体の使い方に近づくことができるからです。
 ここで紹介されるエクササイズは決して目新しいものではありません。ヨガやピラティスなどで行われるものが多くあります。筆者自身もヨガやピラティスを勧めています。
 ただ何も考えることなくそういったエクササイズを行うのではなく、そういったものにどういう意味や目的があることを示している点が本書のもっとも優れたところだと思います。何も考えることなく言われた動きをしているだけでは身体を感じるという一番重要なポイントが抜けるからです。意識を身体の内側に向けて普段何気なく動かしている身体がどう動いているかを意識する習慣づけこそが、将来襲ってくるかもしれない身体の機能障害を未然に防ぐ近道だと思うからです。
 ヨガなどをなさっている方は大勢いらっしゃるでしょうが、動きの意味や目的まで考えている方はそんなには多くないでしょう。
 『感じる力でからだが変わる』というタイトルは、エクササイズをしたから変わるのではなく、「感じる力」を身につけた人こそ身体を変えることができるという筆者のメッセージそのものなんだと確信しました。
 今まで感じたことのなかった身体のつながりを体感できたことは、私にとって大きな収穫でした。

(辻田 浩志)

出版元:春秋社

(掲載日:2017-04-22)

タグ:ロルフィング 
カテゴリ 身体
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スピードに生きる
本田 宗一郎

 本田宗一郎は本田技研工業の創始者で言わずと知れたカリスマ経営者。以前京セラの稲盛和夫氏に心酔し懇話会に通ったりしたものですが、名だたる経営者に共通するのは哲学をお持ちだということ。ハウ・トゥーの経営方法はあまり聞いたことがありません。時代や業種などバックグラウンドが違えば、方法論はいくらでも変化するからでしょう。だからこそそのときそのときの最善策を生み出すための人としての生き方みたいなものが必要になるのだろうと思いました。
 企業は多くの人の集まりであるがゆえに、経営者の哲学が全体に伝わりそれに基づいて動いてこそ、企業が有機体として運営されるのでしょう。
 本田宗一郎という人は子供のころからの夢を、強い信念により現実のものとし、本田技研を大企業にまで成長せしめ、さらにその夢が次の時代に受け継がれていきました。折れることも曲がることもなかった子供のころの夢が本田技研という形になったという点で、多くの人の憧れや尊敬を集めたことには違いないのですが、よくありがちな苦労話というよりも、むしろ楽しそうに活き活きと仕事に取り組まれたという印象が強く残りました。
 他人の二倍も三倍も働いてとくれば、今のご時世「ブラック企業」のそしりも受けそうですが、遊びも大事だとか、うまく休息をとってリフレッシュなんてエピソードがありました。やみくもな努力よりも効率的な仕事のあり方を奨励されています。あの時代に人並外れた努力で出世し、国民の鑑として扱われた二宮尊徳を古いといって切り捨てることはなかなかできることではありません。
 ただしサラリーと引き換えに時間の切り売りという発想ではなく、仕事のときはアイデアを生み出すことに力を注いでおられたようです。そういう考えを会社全体に浸透させることでユニークなアイデアや新しい時代を切り開くための商品開発の土壌をつくることに苦心されたのがわかります。
 本書のタイトル『スピードに生きる』というのはオートバイのスピードかと思いきや、経営のスピードであり、アイデアのスピードであり、流行りのスピードであったり、本田宗一郎の経営観の独自性が疾走感にあることが伝わってきました。
 発想を変えてみたいときに読んでみると面白い本です。

(辻田 浩志)

出版元:実業之日本社

(掲載日:2017-05-13)

タグ:経営 
カテゴリ 人生
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古武術「仙骨操法」のススメ
赤羽根 龍夫

 西洋から発したスポーツは力を尊び、日本の武道は個々の筋肉の力にのみ頼るのではなく、効率的な身体の使い方で力を生み出す。武道などでは「極意」という言い方になるのかもしれませんが、本書は日本古来の身体の使い方を今風に解説したものです。
 今やスポーツの世界もバイオメカニクスなどの研究が進んでいますので、筆者の思い描いているようなものとは少し違ってきているように思いますが、本書の特筆すべきポイントは言語化しづらく観念的であった「極意」というものを解剖生理学的な解説により具体性を持たせたところにあると思います。
 本来は身体で覚えるべきものではありますが、正確な解説に沿えば遠回りしなくて済むかもしれません。
 さらには身体の使い方に対する理解が深まることで、鍛えるべきポイントも見えてきそうな気がします。
 個人的な感想ではありますが、「筋力」と「極意」は二律背反ではありません。近代スポーツでは様々な角度からのアプローチが試みられています。効率的に力を生み出す技術はその中核にもなりうる事項だと思いました。
(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2017-06-03)

タグ:古武術 
カテゴリ 身体
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マラソンは三日坊主で大丈夫!
細野 史晃

 強い決意とともに何かをやり遂げる人はスゴイです。ところがいざ自分がやってみたら長続きせず尻すぼみに終わることがほとんど。始めるときの意気込みはどこへやら。数日でやめてしまう人を「三日坊主」と呼びます。
 最後までやり遂げる人の方が少なくて、三日坊主が大多数なんじゃないかなと思ったりもします。多くの人が意志の弱さを嘆き、どうせ長続きしないだろうとやる前から諦め、いつしかチャレンジすることさえやめてしまう人もいます。
 それでも「三日坊主でもいいじゃないか」なんて言われたら半信半疑でも話を聞いてみたくなります。本書はあえてハードルを下げ、三日坊主を肯定するところからマラソンへの扉を開けようとします。三日坊主の正体を分析し、逆に三日坊主をうまく利用してマラソンを長く続けるように導く発想は素晴らしいです。読んでいると何か自分の三日坊主ぶりが長所のようにも感じられ、ついついマラソンをやってみようかなという気にさせるあたりは人の心理を知り尽くした方だと思います。
 考えてみたら「頑張る」という精神状態はそんなに長続きしないものですからね。身の丈に合った練習法を設定することで、気が付いたら長年続いていたというのがアマチュアランナーにとっては一番いいのだそうです。どんなスポーツでも継続することで力をつけるわけですから楽しくマラソンが続けられ、それに伴い走力が身につくようです。
 ただこの本の凄みは「気楽に走りましょう」というニュアンスではなく、あくまでも合理的にマラソンという競技に取り組み、技術や体力を向上させるというスポーツの本来の部分が根底にあるわけですから、競技能力の向上に関してはシビアな姿勢が一貫してあります。
 昨今スポーツ界では話題になっている認知心理学からの視点や、マラソンの7大要素というのを挙げ、それぞれの要素を押さえたトレーニング方法はかなり本格的できめ細やか。
 マラソンをされる方にはぜひお読みいただきたい本ですが、前半の三日坊主の分析と克服方法はマラソンをなさらない方にもお勧めします。
(辻田 浩志)

出版元:東邦出版

(掲載日:2017-06-10)

タグ:マラソン モチベーション 
カテゴリ 運動実践
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「黒幕」を知れば痛みは治る
高子 大樹

 治療家がいくらレベルの高い知識を持っていても、それが患者に伝わらなければ納得はしてもらえません。納得のないところに「信頼」は生まれないでしょう。難しい理論を語る治療家は大勢いらっしゃいますが、治療家が考えていることを正確に伝えられることとはまた話は別になってきます。
 治療家が考えていることをわかりやすくかみ砕いた説明が、この本の特徴だと思います。治療家と患者の考えのギャップを埋めるにはちょうどいい本ではないかと思います。
 内容的にも奇をてらったものはありませんし、比較的オーソドックスなものだといえるでしょう。
 治療家が百人いれば百通りのアプローチがありますので、考え方の違う人も必ずいらっしゃるでしょうが、私としてはおおむね異議なしといったところ。
 「黒幕体操」なるものが後半に登場しますが、これも一般的によく行われている運動法ですのでお勧めしたいところです。要はこういうところで「黒幕体操」というネーミングで興味を持たせるところに筆者の知恵を感じます。こういう演出も場合によっては必要です。
 読者が興味を持たず印象に残らない内容であれば意味はありません。そういう点で面白く読ませていただきました。

(辻田 浩志)

出版元:自由国民社

(掲載日:2017-06-14)

タグ:痛み 治療 
カテゴリ 身体
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テーパリング&ピーキング 最適なパフォーマンスのために
Iñigo Mujika 水村(久埜)真由美 彦井 浩孝 寺本 寧則

 テーパリング戦略の現実は試行錯誤の積み重ねであるうえに、競技特性や個々の選手によってもやり方が変わってきます。さまざまな要素が絡むために基礎となるべきデータの集積と問題点の整理が必要とされますが、それらをまとめ上げたものが本書だと言えます。
 現場でテーパリングとピーキングをプログラムする際の参考として役立つものが項目別に整理されています。
 テーパリングの生理学的見地と心理学的見地からの考察。具体的に数値化されたトレーニングの変化。各競技にあった方法論などが網羅されています。しかもそれらが単なる数字集めにとどまらず、問題点の掘り起こしや重要度の違いについても言及されているので活きたデータといえるでしょう。膨大なデータに裏付けされた解説には重みがあります。
 練習量や運動強度、あるいは期間やペースなどをむやみやたらと減らしていけばいいというものでもありません。あくまでも試合のときに最高のパフォーマンスを発揮させることが目的ですから、テーパリングプログラムをデザインするときの目安として強い味方になりそうな内容です。
 進め方でありがたかったのは「一目でわかる」という結論の表記。難解な部分も多かったので、理解できないときは結論から読んだ後に詳細を読んでいけば、頭の中で整理されるので助かりました。
(辻田 浩志)

出版元:ブックハウス・エイチディ

(掲載日:2017-10-17)

タグ:テーパリング ピーキング 
カテゴリ スポーツ医科学
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運動をすすめて五十年 身体運動科学の発展
宮下 充正

 今までいくつかのブックレビューを書いてきましたが、ブックレビューを集めた本のブックレビューを書くというのは初めての経験です。
 筆者が読まれた本が紹介されているんですが、ブックレビューがただ連なっているのではなく、筆者の歴史や研究などが時系列的に書かれたものですので、一つの物語として成り立っています。その中には筆者自身のご著書もあり、スポーツや運動に対する造詣の深さには頭が下がるばかりです。
 さまざまな角度から書かれた本が並んでいますので、運動を行う目的もそれぞれの立場で明確になり、それがどういった効果をもたらすのかもよく理解できます。
 とても不思議な本です。筆者のストーリーに興味を持つことができ、純粋に学術書としての知識も得られますし、興味のある本を買って読んでみたいとも思いました。
 物語でもあり、知識も習得でき、本のカタログとしても使える。よくもまあこんなに質の異なるピースを見事に組み立てたものだと感心します。パズルのような本は、ほかではお目にかかれません。
(辻田 浩志)

出版元:明和出版

(掲載日:2018-02-28)

タグ:ブックレビュー 運動指導 
カテゴリ スポーツ科学
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患者とできるフォームローラーパーソナルセラピー
福辻 鋭記 市川 繁之 伊藤 和憲 石原 新菜 長谷川 洋介 杉山 ちなみ

 物置でほこりをかぶっていたストレッチポールを引っ張り出してきて、本書を読みながら実践しました。我が家の物置にはバランスボールやケトルベルなどのトレーニング器具がいくつかあるのですが、そのときの興味だけで買ってきて適当にやって飽きたら日の目を見ずにほこりをかぶる、というパターンがどうも多いのです。
 フォームローラーにもさまざまな目的があり、そのメソッドも多様であることを知りました。本書ではフォームローラーという商品名のものが使用されています。三種類の硬さがあり、目的や方法に応じて使い分けられています。
 デスクワークでなまった身体をよみがえらせる。高齢者向けのエクササイズ。鍼治療の効果を高めるトリガーポイント療法。東洋医学の見地から見た血流改善のトリートメント。マインドフルネスの瞑想との組み合わせで精神に作用させるムーブメント。スポーツ医学に基づいた美しい姿勢をつくるトレーニング。実に多種多様の目的とそれぞれの方法論が、それぞれのジャンルの専門家によって解説されています。だから単にストレッチを目的とするエクササイズとはかなり違いがあります。
 1つずつ実践してみると、6つのコンテンツの目的が見えてきます。ただ買ってきたからなんとなくやっていたときと身体の中で感じるものの違いが明白です。きっとほかのトレーニング器具でも同じなんでしょうが、目的をしっかり持つことの重要性を改めて感じた一冊です。器具に新たな命が吹き込まれたような気がしました。
(辻田 浩志)

出版元:医道の日本社

(掲載日:2018-05-26)

タグ:運動指導 トリガーポイント 姿勢 マインドフルネス 
カテゴリ 運動実践
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アレクサンダー・テクニーク完全読本
リチャード ブレナン 青木 紀和

 アレクサンダー・テクニークというものを初めて知ったのは10年ほど前。当時何冊か読んだのですが、アレクサンダー・テクニークについて音楽家や舞踏家のためのボディーワークであると認識していました。それを人に言ったらお叱りを受け、アレクサンダー・テクニークはもっと哲学的で精神的でいろんな要素を含んでいるといわれました。
 そのころ読んでいた本は、確かにアレクサンダー・テクニークの部分的な要素を取り上げたものであったとは思いましたが、哲学的とか精神的なと言われても想像もつかず、つかみどころのないイメージが私の頭の中に残りました。
 タイトルの通り本書は「完全読本」。つかみどころのないものがつかめるかもしれないという期待で読んでみました。
 期待通りに私の中でのアレクサンダー・テクニークで欠落していた要素がしっかりと書かれていました。逆に見えてきた分だけアレクサンダー・テクニークが目的とすることの難しさや奥行きの深さを感じました。
 身体面・感情面・心理面・精神面と、まさに心と身体における様々な要素に作用するワークだと認識を新たにしました。
 だから方法論も正しい身体の使い方という面に対するアプローチではなく、メンタルとフィジカルを不可分一体と捉えた上のワークになっているようです。どちらかといえば瞑想に近い感じもしました。近年、マインドフルネスやヴィパサナなどの心理や精神世界のワークも多く見かけるようになりましたが、そこに解剖学や運動学の要素がミックスされたような印象を持ちました。
 多くの人が自分の思う通りに身体を使えていると信じて疑わないでしょう。ところがその中に不必要であったり不適切な要素があることには気づいておられないでしょう。そして習慣の中に組み入れられることで心身の不調を引き起こしたり、理想とする動きを阻害したりします。
 よく「気づき」という言葉が使われますが、アレクサンダー・テクニークにおいて気づくべきは不適切な身体活動と精神活動であり、そこからの修正を試みることだと思います。正直なところ、従来のボディーワークのイメージでとらえてしまうと違和感を覚えてしまうでしょう。まずはアレクサンダー・テクニークの目的をきちんと理解することから始めるべきだと感じました。

(辻田 浩志)

出版元:医道の日本社

(掲載日:2018-06-07)

タグ:アレクサンダー・テクニーク ボディーワーク 
カテゴリ ボディーワーク
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メタボ&ロコモ予防講座 メタボとロコモの意外な関係
増子 佳世 水上 由紀 坂手 誠治

 中年と呼ばれるようになると身体の変化が気になり始めました。一日の疲れが一晩では取れなくなり、ちょっと走れば息が切れ、それがなかなかおさまらない。若い頃との変化に気づくようになれば立派な中年の出来上がり。
 それでも「まだまだこれから」とばかりに頑張る私たちに、近年いろいろな言葉が投げかけられるようになりました。「メタボ」「ロコモ」なんて言葉は20年前は誰も言わなかったはずです。最近では「サルコペニア」という言葉まで耳にするようになり、中高年を取り巻く環境は少しずつ変わってきました。
 これらの言葉が私たち中高年を対象としていることはなんとなく理解しています。お腹に脂肪がつけば「メタボ」だといわれますので漠然と肥満を指し示すことくらいはわかってはいますが、あれだけ頻繁に飛び交う言葉の割に、その定義やメタボだったらどうなるのかについての具体的な知識はありません。知らないというものは気楽なもので、メタボやロコモといわれてもどこ吹く風。他人事のように感じていたのも事実です。
 本書はメタボやロコモを正しく理解し、予防・解消の具体的な方法論を提供してくれる中高年の味方とも言える本です。
「メタボだったら」「ロコモだったら」具体的にどういう問題が発生し、どういう病気になってしまうのか。まずそこからスタートします。だんだん読んでいるうちに身につまされて、このままではいけないと素直に反省してしまいました。
 具体的な内容には触れませんが、メタボもロコモもサルコペニアもいろんなところでつながりがあり、定義や視点は違うもののそれぞれの関係性において密接に関わっていることがよくわかります。
 素直に今までの自分を反省したら、救いの手を差し伸べるかのように対策について詳しく書かれています。その要素は2つ。食事と運動です。
 まず食事に関してはこんなことが書かれています。「宣伝費のかかっている広告やネットの口コミで『身体にいい』と言われているような食品やサプリメントを高いお金を払って食べ続けるよりも、まずは自分の料理の選択や量、食べ方など、食事全体を改善することが必要です。」
 これは実に重い言葉です。裏を返せば何か都合のいい単品の食品では問題解決につながらないことを示唆します。昨今商業主義の情報に惑わされる人が少なくない中、もう一度食生活全般を見直そうということです。しかも安易なダイエットに対しても警鐘を鳴らされては戸惑う方も少なくないかもしれません。またここで私がダイジェスト的な方法論を紹介するのさえはばかられるほど、食事は広範囲に影響を及ぼし、やり方を間違えるとメタボの改善がロコモの進行につながるケースもあるというから、「総論」で書かれていたメタボとロコモの関係性が、ここでひとつの鍵となってくるのです。
 運動に関してもやみくもにすればいいというものでもなさそうです。2013年に厚生労働省が身体活動量の基準を出していますが、そういったものをもう一度見直してみるのもよさそうです。また筆者たちの研究による、きめ細かな運動についての提言もご覧いただきたいです。
 10年後20年後にメタボから現実に病気を患ったり、ロコモになって痛くて歩けなくなるかもしれません。それを避けるための処方箋だと考えて本書をお読みいただければ、ほろ苦さも納得がいくことでしょう。
 本書は真面目に読めば難しい話も多く、嫌気をさす方もいらっしゃるでしょう。「良薬は口に苦し」といいますが、良本も口に苦しということなのでしょうか? その代わり30年後に笑って暮らせるようにしたいと思います。

(辻田 浩志)

出版元:大学教育出版

(掲載日:2018-06-12)

タグ:ロコモ メタボ 
カテゴリ 運動指導
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ドライチ ドラフト1位の肖像
田崎 健太

 日本プロ野球新人選択会議、通称ドラフト会議。毎年ドラフト会議で指名された若者たちだけがプロ野球の門をくぐることができます。選手たちにとって野球をやる上で憧れのプロの世界に入るために指名を待つ儀式でもあり、球団にとっては有望な新人を獲得し、より強いチーム編成をするうえでもっとも重要な行事でもあります。
 毎年数十人の選手が指名される中、ドラフト1位は12人だけ。当然それぞれの球団においてもっとも期待がかかり、注目を受けます。
 ドライチ(ドラフト1位)で指名された選手の中で期待通りの活躍をする選手もいれば、期待外れに終わり寂しく球界を去る選手もいます。その中の8人の選手にスポットを当て、決して報道されることのなかった真実を取材したノンフィクション。
 実力不足・不運・タイミングの悪さ・人との出会い・転機。ここの登場する選手の運命みたいな要素は意外なほど一般社会のそれと変わりありません。プロ野球に入る人なんて特別な人であるという認識は読んだ後も変わりませんが。
 ただ私たちと大きく違うのは、眩いほどの輝きを放っていることで、これがドライチの背負うものだと確信しました。多くの人が集まってきて、いろんなことを言われ、特別な経験をしています。それなのにテングになるでもなく、冷めた目で周りを見ていたり、狼狽したり、振り回されたり。あまり楽しそうな印象はなさそうです。引退してから取材されたから冷静に振り返っているというのもあるでしょうが、人間、急に持ち上げられるとかえって警戒心を抱いてしまうのかもしれません。
 好きな球団を言ったら逆指名と書かれ、ありもしないトレード話をさも真実のように書かれたり、本人にしたら人間不信になってしまうのも無理のないところ。ケガで思うように練習ができずあったはずの伸びしろも削られてしまうのは残酷としかいいようがありません。それでも生きていかないといけないわけですからいつまでも下を向いているわけにはいきません。当時誰にも言えなかった本音もあらためて聞くと身につまされ、印象が少し変わりました。
 長距離打者として期待された元木選手(元巨人)も生き延びるために「くせ者」の道を選んだり、登場する8人が王道をまっすぐ歩んでいったわけではないところに、この本の見どころがあるように感じました。
 エールとも感じられる筆者の文章は、同時につまづきながらも頑張って生きている私たち読者へのエールだと受け止めました。
(辻田 浩志)

出版元:カンゼン

(掲載日:2018-06-16)

タグ:プロ野球 ドラフト  
カテゴリ スポーツライティング
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自分ですぐできる! 筋膜筋肉ストレッチ療法
マーティー 松本

 筋肉が原因となる痛みや不快感に対しては、身体を動かすことが有効だと思います。もちろん外傷性の場合や重篤な場合は禁忌事項となりますが、軽微な機能障害の場合は運動することで治まることがあります。血行が促進されるだけでも好転するでしょうが、さらに身体の仕組みを理解したうえで身体を動かせば、身体の様々な機能が働き、2倍3倍の効果も期待できます。
 また何らかの痛みがある場合、自分でやるといっても不適切な方法で動かして悪化させるリスクもありますので、適切な方法があればそれに従うべきでしょう。
 本書は徒手療法でも定評のある筋膜リリースやマッスルエナジーテクニックなどを用いた自己治療を紹介したものです。
 近年注目されるようになった筋膜リリース。筋膜のひずみや癒着を解消することで筋肉に対するストレスを軽減するという概念です。業界では筋膜の連続性に着目し、筋膜のつながり(ライン)に対しアプローチする手法が広がっていますが、本書では症状が出ているところに対して直接アプローチする方法が紹介されています。
 マッスルエナジーテクニックに関しても等尺性収縮後リラクセーションと相反抑制を利用した異なる2つの作用機序の手法がありますが、本書では基本ともいえる等尺性収縮後リラクセーションに関してのみ紹介されています。
 できるだけ難しい要素を排除して誰でも簡単にできる方法を紹介されている点で評価できます。そしてどんな技法にもリスクはありますが、最後に「注意点」として医師の判断を仰ぐべき場合も書かれていますので、良心的だと感じました。

(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2018-06-20)

タグ:マッスルエナジーテクニック 筋膜リリース 
カテゴリ ボディーワーク
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我ら荒野の七重奏
加納 朋子

 中学の吹奏楽部が物語の舞台。正直どんなところでも物語になるもんだなと感心しました。人がそこで生きている以上、それそのものが物語であるわけですが、母親が主人公というのは意表を突かれた感じがしました。慣れないシュチエーションに戸惑いつつ読んでみると、今どきの親子関係で話が展開。私が子供のころとは全く違うし、私の子供の世代とも様子が違いそうですし、何よりも父親と母親とでは子供に対するスタンスが違いますので、異次元の物語を読んでいるような違和感を覚えつつスタート。
 ところがひとたびストーリーが転換すれば疾走感のある展開が次々に待っています。冷めた気持ちで読んでいたのですが、中盤から後半にかけて物語にのめり込んでいきます。中学生の母親たちの凄まじいパワーは、恐ろしくもあり痛快でもあります。作者のたたみかけるようなストーリーの進め方は主人公のパワーと相まって読者を引きずり込むように思えました。
 こんな環境はあまり好きではありませんが、物語として読む分にはこんなに面白い話はありません。結果よければすべてよし。最初はもめていた母親たちも次第に分かり合え、子供たちも成長してハッピーエンド。予想を裏切らない結末ではありますが、軽快な小説はこうでないといけません。
 頑張っているおかあさんの物語です
(辻田 浩志)

出版元:集英社

(掲載日:2018-07-10)

タグ:吹奏楽  
カテゴリ フィクション
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メディカル・タイマッサージ入門
大槻 一博

 いわゆる現代医学が世界中を席捲するわけですが、その昔はそれぞれの国でさまざまな医療がありました。もちろん今もなお続いているものも多くありますが、かつては主役として人々を救っていたものも、今では代替医療という脇役の位置づけになっているのが実情のようです。
 現代医学・西洋医学の功績は今さら語るまでもありませんが、何でも治せるということでもありません。そして世界中の伝統的医療の価値が下がったのかといえば必ずしもそうではありません。現在もアジアにおいては、漢方やアーユルヴェーダなどが多くの人に支持され、その存在価値は十分に感じます。
 本書はタイのホリスティック療法としてのタイマッサージが紹介されています。たいていこの手の本には手技が中心に紹介されているのですが、この本の特徴は解剖生理学や病理学的な記述が多くを占め、古典的なタイマッサージ技術というよりも現代医学の要素を取り込んで発展したものだと感じました。もちろん伝統的な思想は基本として残っていますが、新しい知見も包括した懐の広さがあります。
 面白いと感じたのは漢方の経絡や経穴も取り入れられていることで、やはり大陸続きということもあり、情報や文化は伝わるということが見えてきます。アーユルヴェーダやヨガと類似のメソッドも多々あります。どちらが起源であるかなんて些末な問題であり、効果の高い技術は自然と広がるのが当然ですので、アジア全体の医療という捉え方でもいいんじゃないかと思います。
 きめが細かく根拠を感じる解説は読みごたえありです。ところどころにスポット的に登場するコラムも「オキシトシンとタイマッサージ」や「セロトニンとタイマッサージ」など、今の時代に対応しようとするタイマッサージの可能性に期待したいところです。

(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2018-08-07)

タグ:タイ式マッサージ 
カテゴリ マッサージ
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めざめよカラダ! “骨絡調整術”
平 直行

 こういう武道系の身体操作術の本は好きでよく読んでいますが、正直言って当たり外れが激しいというのが私の印象です。とりわけ武道というものは理論よりも実践の中で培われたものですから文章化すること自体に馴染みにくいという性質もあるからだと思います。それと武道ひと筋でやってこられた方が多いので、ご自身の世界観の中での話に留まることもしばしば。だから筆者の世界観が合わなければ読んでいて苦痛に感じることさえありました。
 しかし実際に読んでみて、そういった心配は無用でした。イラストを交えた解説もわかりやすく、とっつきにくさはありません。読者のことを考えながら書かれたものだと感じました。
 やはり大切なのは本に書かれた情報をもとに実践したとき、どう感じるかだと思います。だから可能な限り自分で試してみるようにしているのですが、本書に関してはいくつかアッと思うような感覚がいくつかありました。最近、私は右肩と左の股関節に問題を抱えていたのですが、本書で紹介されたメソッドを試してみると右肩の引っ掛かりが消失し、左股関節の痛みも感じなくなりました。論より証拠、これほど具体的な結果を見せられては否定する理由がないというもの。
 武道の型は古来より伝承されたものであり、理にかなったものでなければ生き残ることはかなわないという納得できるような納得できないような言い方になるのですが、結果が出ればそれも信用せざるを得ません。同じ話が何度も出てくるのもご愛敬といったところでしょうか。
 骨格の正しい使い方で極力筋力に頼らないというのは、筋骨格系の効率的な身体操作だと思います。それだけに力に頼った身体の使い方を続けているとアンバランスになり、全く使えていない筋肉が萎縮したり弱体化することは、身体の本来の機能を失うばかりか痛みまで誘発することもあります。
 筋力に頼らないということは、筋力が衰えた高齢者にとっても有効な手段となりうるのではないかと感じました。
(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2018-10-27)

タグ:武道 
カテゴリ 運動実践
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“手のカタチ”で身体が変わる! ヨガ秘法“ムドラ”の不思議
類家 俊明

 ヨガを習い始めてちょうど10年。それでも「ムドラ」について教わったことは一度もありません。日本でヨガをやっている方で、ムドラについてご存知の方はきっとごく少数なんだろうと思います。それだけ難しいのでしょうか。とりわけ日本のようにスポーツジムでやるエクササイズの感覚ではムドラは受け入れられないのではないかと想像します。
 「ムドラ」っていったい何なのかといえば、「手印」のことをいいます。実は意外に身近にもあるのですが、仏像がしている手の形がムドラです。アニメで「NARUTO」というのがありましたが、登場する忍者が術を発動するときの手の動き、つまりは印を結ぶことがムドラの説明としてわかりやすいかもしれません。
 昔から忍者もののアニメや映画では呪文を唱えて印を結び不可思議な術をかけるというのがお決まりですが、見るからに怪しげな行為ゆえに科学的根拠を求められる現代においては敬遠されがちなのかもしれません。
 本書の一番の特徴は突き詰めて勉強すれば深遠で理解しがたいムドラをヨガの体操に落とし込み、誰にでもできる簡単なものにした点だと思います。ラジオ体操のような「M3体操」なるものを考案され、手軽にムドラの持つ不思議な効果を実感できるというのは画期的だと思います。これでハードルはかなり低くなったのですが、わけのわからないムドラというものを腑に落ちぬままやっても気持ちよくできるはずがありません。そこで筆者はいくつかのムドラを使い、簡単な運動を紹介し、ムドラの効果を読者に体感してもらおうという試みもあります。やってみるとなるほどと感じるものがありました。
 なぜ手で印を結ぶことで不思議な効果を得られるのかについては、ペンフィールドの大脳地図を引き合いに出して解説されています。もちろんその解説ですべて納得できるわけではありませんが、傾聴に値する意見だと感じました。さらに手の形で身体の力が引き出せることをムドラとするならば、ゴルフクラブやバットやラケットの持ち方(つまりは手の形)で身体操作を円滑にするということもムドラと同じだと説きます。
 もっと深いところのヨガの理論はさすがに期待できませんが、手軽に始められるものとしてはとても読みやすい本だと思います。
(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2019-07-22)

タグ:ヨガ 
カテゴリ 身体
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サバイバルマインド
Megan Hine 田畑 あや子

 筆者のミーガン・ハインは女性サバイバー。正直私の興味から言うとサバイバーという職業はかなり縁遠く、あまり関心がありませんでした。逆に自ら好んで生死の淵に向かう人が何を考えているのか、少し興味があるくらいでこの本に出合いました。
 サバイバルには屈強な肉体よりも精神力の方が重要だと言い切ります。そして本書はサバイバルに必要な精神を筆者の経験談とともに書かれていますので、とても説得力があります。
 まったく関心も知識もない世界のお話だけに新鮮に感じずにはいられません。避妊具のコンドームを手袋として使ったり、止血帯や投石器としての使い道や、可燃性の高さから濡れた場所で火を起こすのに使うなど、普通ではできない発想には舌を巻きました。
 16の項目に分けてサバイバルというものを解説していますが、これら一つ一つの要素は私にとって縁遠いものではありませんでした。むしろ彼女が必要とするサバイバルマインドは、普通の社会で暮らす我々の社会生活や仕事において必要な要素とまったく変わらないものだと確信しました。ただサバイバルの性格上、失敗が命の危機に直面するから印象深く感じるのだと思いますが、ここで書かれたサバイバルに必要な多くの要素はそっくりそのまますべての人に当てはまるものでした。
 私がもっとも共感したのは、「直観」というものが多くの経験の蓄積が無意識のうちに下した判断であるとされ、経験の重要性を認めたうえで、過去の経験だけに頼っていると経験則の罠にはまるとも言われます。筆者の経験との距離感、そして経験にとらわれない自由な発想、これらのバランスがすごくいい方だと感じました。それが生き残る秘訣なのかもしれません。
 命に関わる危機に直面すれば人はパニックに陥ります。しかし命がかかっているからこそ冷静に決断しなければなりません。そういう局面で決断の手順を持っておられるところには恐れ入りました。しかも7段階にわけてより正しい判断をするという、冷静さと恐怖をコントロールする力に筆者の凄みを感じてしまいます。
 アクション映画さながらのお話に驚嘆しながら読んでいるうちに、私たちの生活にも必要なエッセンスに気づかされていきます。それが実践できれば危機対処に強くなれそうな気がします。ハラハラドキドキしながら読んで人生訓が得られる本って珍しいです。
(辻田 浩志)

出版元:エイアンドエフ

(掲載日:2019-07-27)

タグ:サバイバル 
カテゴリ 人生
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スポーツビジョン医科学教本
日本スポーツビジョン協会

 五感を通じて得られる情報のうち、9割弱が眼から得られるものだと言われています。私たちは日常生活においても視覚に頼ることが大きいのです。ましてや素早い動きを要求されるスポーツにおいて、ハイパフォーマンスをするうえで次の動きをするための重要な情報をいかに正確に、いかに早く収集するかがとても重要な要素だと言えましょう。
 本書は視覚を司る眼の機能や構造、そしてその能力について研究されたものです。意外に知っていそうで知らないことが多い眼の基礎知識やメガネを使用している私自身があまりきちんと把握していなかった屈折異常の問題についても詳しい解説があります。余談ではありますが、先日新しいメガネを新調したのですが、毎回行われる何種類かの検査もわけがわからないままに受けていたのですが、ここでの説明を読んで得心しました。
 この本において中心となるのはスポーツビジョン。視覚能力を高め、身体機能と連携を高めることによってパフォーマンスの向上を目的とする概念ですが、動体視力という言葉くらいは知っていたものの、視覚能力というものはもっとさまざまな類型があり、競技によってもどんな能力が重要になるかは異なるようです。
 そして最も重要なのは視覚能力だけを向上させてもあまり意味はなく、身体機能との連携が必要で、そういった新しいトレーニングも進化しているようです。これからのスポーツはスポーツビジョンから目が離せません。

(辻田 浩志)

出版元:ブックハウス・エイチディ

(掲載日:2019-07-29)

タグ:スポーツビジョン 
カテゴリ スポーツ医科学
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プロレスという生き方 平成のリングの主役たち
三田 佐代子

 私たちの世代にとって、ヒーローといえばプロ野球の長嶋茂雄であり、王貞治でした。そして野球と人気を二分する形でプロレスのジャイアント馬場とアントニオ猪木も子供の憧れでした。娯楽が少なかった分だけ人気が集中しました。今では考えられませんが、ゴールデンタイムには野球かプロレスのどちらにチャンネルを合わせるかで悩んだものです。
 平成という時代は「多様化」という言葉がキーワードになるかもしれません。数多くのスポーツが注目されるようになり、野球もプロレスもゴールデンタイムの地上波で見ることはかなわなくなりました。それでも昭和とは違う形でプロレスも生き残っています。本書は平成のプロレス事情を紹介したものです。
 平成のプロレスのキーワードもやはり「多様化」だったようです。馬場・猪木のストロングタイプのレスリングだけではなく、様々な要素で客を惹きつけることで生き延びる数多くの団体とレスラー。元々いたファンにプロレスを見せるということが難しくなった時代に奇想天外なアイデアで新たなファンを獲得する姿は進化といっていいかもしれません。路上でプロレスをしたり、人形相手の試合をしたり、透明人間と闘うという設定の独り相撲ならぬ独りプロレスもあるそうです。そのアイデアだけでも興味をそそります。
 本書は選手に対する賛美だけではなく、リアルなプロレスの苦労であったり失敗なども赤裸々につづられています。かつて子供のころに憧れた完全無欠のヒーローではなく、生身の人間の生き様そのもの。登場する人たちの息遣いが聞こえてきそうなエピソードは人間臭さを感じさせます。
 レフリーが登場したり裏方の人が登場したり、いろんな人がいてプロレスの興業が成り立つのが理解できました。かつてワイドショーをにぎわした女優沢田亜矢子さんの元夫であるゴージャス松野さんのエピソードは印象的。福島県で大震災にあい、プロレスラーとして東北の人たちを勇気づける話は心が温まります。
 平成から令和に時代が変わり、プロレスはこの後どんな進化を遂げるんでしょうね。プロレスファンはもちろんのこと、プロレスに興味のない方でも楽しく読むことができます。

(辻田 浩志)

出版元:中央公論新社

(掲載日:2019-08-07)

タグ:プロレス 
カテゴリ 人生
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身体のデザインに合わせた自然な呼吸法 アレクサンダー・テクニークで息を調律する
リチャード・ブレナン 稲葉 俊郎

 人は呼吸することなしで生きていくことはできません。それにもかかわらず仕事や食事など生活上の行為に比べると深く考える人はいません。なぜならばなんの努力も苦労もなしにできるのが呼吸だからです。
 誰もがあまり意識することのない呼吸のメカニズムは複雑で繊細です。人は困難なことには注意を払いますが、当たり前のことにはさほど思考を働かせません。それゆえに知らず知らずのうちに適切な呼吸ができなくなっていても気づく人はいません。好ましくない呼吸法がいつしか身体の能力を低下せしめたり、何らかの身体的な不具合が現れたときに気づくのかもしれません。場合によっては病的な状況に陥っても、その原因が呼吸にあることに気づかないケースもあるようです。
 本書はアレクサンダーテクニークの考えから、その中核を担う呼吸法に言及したものです。知っているようで意外と知らない呼吸のメカニズム。前半は呼吸と発生についての基礎知識。改めて解説されると複雑であることがわかります。それを知ったうえで呼吸の問題点を探れば具体的な矯正ポイントが明確になります。
 本書の中心的な問題は、あまり呼吸について意識しないのは、各々が自らの呼吸に対し漠然とした感覚による評価だけだからであるという指摘があります。さらにその感覚的評価というものがあまり正確ではなく誤りの多いものだと主張します。考えてみれば病気のときでも初期の段階では身体の異変にあまり気づくことがなく、痛みや発熱などの具体的な症状があらわれて初めて異変に気付くものです。そう考えれば筆者の考えは納得がいきます。
 実際に本書が推奨する呼吸法自体はまさしく「身体のデザインに合わせた自然な呼吸法」であり特殊なものではありません。しかしながら身体の誤った使い方が習慣化することで自然な呼吸法ができなくなっているという点が主旨であるといえそうです。そして身体の使い方の誤りをなくせば、勝手に自然な呼吸法になるということのようです。
 この本は同じ筆者の『アレクサンダー・テクニーク完全読本』をお読みになった後に読んでいただいたほうが筆者の言いたいことがよくわかるだろうと思います。私は以前に「完全読本」を読んでいたので下地がありわかりやすかったのですが、もし読んでいなければ、大事な根底部分がボケてしまっていたかもしれません。

(辻田 浩志)

出版元:医道の日本社

(掲載日:2019-08-30)

タグ:アレクサンダーテクニーク 
カテゴリ ボディーワーク
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クレージー・ランニング
高部 雨市

 マラソンという競技は3時間弱で競いますが、その時間のために途方もない時間・人・金が必要です。私たちはレースの中継を見て熱狂します。しかしそれに至るエピソードに触れる機会はあまりありません。それがあったとしても、たいていは勝者にまつわる美談です。勝者がいれば必ず敗者もいます。オリンピックに出場できる者がいれば、選考に漏れる者もいます。本書はあまり語られることのない舞台裏の物語を包み隠すことなく書いたものです。「暴露」という言葉を使えばスキャンダラスになりますが、選手の気持ちに対し真摯に向き合う様子は「人間模様」と表現したほうが正しいかもしれません。

 走る選手にもそれぞれの事情があります。走るのが好きな選手もいれば、走るのが好きではなくビジネスとして走る選手もいます。心に刃を持ち復讐のために走る選手までいたなんて、夢にも思いませんでした。ランナー一人一人のバックボーンの違いが、レースに対する姿勢・考え方に色濃く反映するのでしょう。普段競技について語られることはあっても、ビジネス的な側面からマラソンを見る機会なんてありませんが、選手・監督・選手が所属する企業、そしてメディアなどそれぞれの立場にそれぞれの利害があるそうです。そこから生まれる葛藤や妬みなど人間社会ならではのあり様は、神聖化されがちなトップランナーにも同じくあることを知らされました。それぞれの時代を代表するランナーたちの赤裸々な生きざまは、有名な選手であるからこそ余計に生々しさが伝わってきました。

 レースを演出するメディアとスポンサーの思惑。スポーツを商品として高く売り買いしたい当事者。我々が興奮しながら見ている中継は、多くの人間の利害によってつくられていることがわかりました。読み終えて初めて納得したのは『クレージー・ランニング』というタイトル。一生懸命に走るランナーに「クレージー」は失礼だと思いましたが、レースに関わる人たちによるマラソン狂想曲ということだったのでしょう。

(辻田 浩志)

出版元:現代書館

(掲載日:2019-09-12)

タグ:マラソン 
カテゴリ スポーツライティング
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徒手筋力検査 ビジュアルガイド 臨床の質を高める技術と機能評価
Karin Wieben Bernd Falkenberg 斉藤 明義

 私ごとで恐縮ですが、去年父親が脳卒中になり入院していました。幸いにも大きな後遺症もなく、左半身にわずかな片麻痺ですみました。その病院ではリハビリの環境がしっかりしていて理学療法士や作業療法士の皆さんが毎日懸命に機能回復に取り組んでくださいました。私も毎日のように病院に参りましたが、父親の評価を事細かに説明してくださいました。「三角筋の前部が同年齢の何%で、中部が何%です」とかなり具体的な数値評価を出しておられました。おかげで日に日に回復し、ひと月ほどで退院するときも、どの筋肉がどれくらい数値的に弱いかを説明したうえで、退院後のリハビリの方法まで教わりました。

 こういった現場では、かなりきめの細かいところまできちんとした評価がなされていることを初めて知りました。検査により正しい評価がなされたうえで初めて、その課題に対するリハビリがあるということを今更ながらに思い知らされました。そういった経験をしたあとに本書を読めば、筋力検査がきちんとできてこそ、適切なリハビリがあることが理解できました。

 内容的には基礎知識から始まるのですが、現場でその知識を活かすための関連づけのある解説になっている点、構成に工夫が感じられます。身体全体の評価から次いで部位別の細かい検査という流れはそのまま臨床での手順として用いることができるでしょう。さらに臨床で起こる具体的な症状についても言及があり、あくまでも「現場で使える」というこだわりを感じました。最後にはテスト問題まで用意されていますので、学生さんが勉強するにはうってつけの一冊となっています。

(辻田 浩志)

出版元:医道の日本社

(掲載日:2019-09-17)

タグ:筋力検査  
カテゴリ 医学
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ラグビーは頭脳が9割
斉藤 健仁

 2019年ラグビーワールドカップが始まりました。初戦で日本代表はロシアに勝利しましたが、前回のワールドカップで勝利するまでは24年間白星から遠ざかっていました。体格的に劣るといわれた日本が変わったのは「スマートなラグビー」を目指したからでしょう。コンタクトスポーツである以上、体格は重要な要素であることは間違いありませんが、日本人の持つスピードを活かすことで、日本人らしい戦い方を模索し始めたことが契機になりました。

 スマートなラグビーを支えるのは戦術。本書は日本代表、トップリーグ、大学、高校と強豪と呼ばれるチームがどのような戦術を立て強くなっていったかを解説したものです。チャートを使った戦術の説明は、ラグビー経験のない人でも容易に理解できます。選手たちの動きが頭の中で映像となって甦ってきそうです。

 単なる作戦の説明にとどまらず指導者の考え、悩みなどもドキュメンタリーな進行で描かれていますので戦術面のドライさと精神面のウェットな部分が本書を立体的なものにしていると感じました。

「頭脳が9割」とタイトルにはありますが、あくまでもプレーするのは人です。個人の考え方や特性と戦術が適合してこそ勝利に結びつくというもの。頭脳を使うというのは単に作戦を考えるだけではなく、チームとしての方向性を考え、プレーする選手の判断力を高めたものがチーム全体で機能するところまで考え抜かないといけないようです。「人があって方法があり、方法があって人がある」パナソニック監督のロビー・ディーンズの言葉通り、人と戦術が合致するところまで高められたチームのすごみが文章の中から伝わってきます。こういったラグビーの楽しさは実際にゲームを見るときに大いに役立つでしょう。

 スポーツは生き物です。今、高校生から代表チームまで日本中のラグビーが変わろうとしています。期待したいですね。

(辻田 浩志)

出版元:東邦出版

(掲載日:2019-09-24)

タグ:ラグビー 
カテゴリ その他
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健脚商売 競輪学校女子第一期生24時
伊勢 華子

 何人かの(元)女子競輪選手のドキュメンタリー作品です。有名選手のサクセスストーリーとは程遠い一人一人の人間像が描かれています。本書の特徴といえば肝心の競技に関わる部分がとても少なく、女子競輪選手のストーリーというよりもむしろ一人の女性のストーリーが幅広く描かれています。
 想像するに競輪の熱心なファンが期待しそうな、勝つための苦労話とか、血のにじむような努力を経て栄冠を勝ち取るというようなスポーツドキュメンタリーにありがちな話はありません。飼っていたウサギが死んでしまったとか、ダンサーになりたかったけどあきらめたなど、肩透かしを食らいそうなほど競輪とは関係のないストーリーが大半を占めます。
 叙事的ともいえる淡々とした描写は筆者の作風そのものだと感じましたが、感情的なものをあえて抑えた書き方だからこそ、読者の想像力が掻き立てられ、登場人物の人となりや感情を頭の中で描いてしまいました。感動を強制されるような表現は皆無といっていいでしょう。そんなところに筆者の凄みすら感じてしまいました。
 私なりに感じた裏テーマは「挫折」だと思います。夢があり挫折して競輪の世界に入ってきた者もいれば、競輪の世界で挫折した者もいました。人は挫折したからといって死ぬわけではありません。むしろ挫折してからの生き方にこそ意味があるように受け止めました。
 正直、華やかな作品とは言えませんが、じっくり読めば多くの人に共感を与える作品だと思いました。
 巻末に登場人物の近況が記されていました。80歳を超え競輪とは無縁の生活をされている方もいます。明日の栄冠を夢見て頑張っておられる現役選手もおられます。皆さんの今の生活を知ってすごく救われた気がしました。それだけ皆さんに感情移入して読んでいたのでしょう。

(辻田 浩志)

出版元:中央公論新社

(掲載日:2020-02-20)

タグ:競輪 女性 
カテゴリ スポーツライティング
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PNFスポーツオイルマッサージ
辻 亮 田中 代志美

 PNFとは固有受容器を刺激することによって、神経筋機構の反応を促通する方法という定義があり、リハビリテーションを中心に幅広く用いられているテクニックです。筆者はそれをオイルマッサージと組み合わせスポーツの世界で応用しており、PNFオイルマッサージという技術や理論を記したのが本書です。
 いかに優れた技法でもその作用機序は限られ、決して万能というわけではありません。異なる技法を組み合わせることで相乗効果により高い施術効果が期待できそうです。
 本書が優れている点は、基礎編と実技編に分けられているのでPNFスポーツオイルマッサージになじみのない初心者でも読みやすい点です。禁忌事項や注意事項などもしっかりと書かれていますから、実際に使うときにも役立ちます。読み手が一番興味のあるテクニックもとても具体的に写真を見ながら学べるのもありがたいところではないでしょか。
 元々は身体機能が低下した患者のために開発されたPNFも、アスリートの疲労回復や身体機能向上という異なるフィールドで使うために進化しています。

(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2020-12-08)

タグ:PNF オイルマッサージ 
カテゴリ マッサージ
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近代日本を創った身体
寒川 恒夫 中澤 篤史 出町 一郎 澤井 和彦 新 雅史 束原 文郎 竹田 直矢 七木田 文彦

 まず驚いたのは本書のテーマと切り口です。近代日本史でもなくスポーツが日本に普及するいきさつでもなく、明治時代から戦後の昭和に至るまでの日本人の身体を通して見る国家であったり健康であったりスポーツであったり、盛りだくさんのテーマがあります。普段見ることのない角度からの近代日本からは、歴史の教科書にはないものが見えてきます。
 江戸時代にはスポーツのような競技の概念はなかったようです。武道・武術が近いのかもしれませんが、やはり戦を前提としたもので、今の時代のように身体を動かして楽しむというレクリエーション的な要素は少ないのかもしれません。現在の日本人から見れば全くの異文化ともいえます。
 明治以降、ヨーロッパを中心とした諸外国との交流があり、人種による体格の違いに劣等感を持ったり、江戸時代には寛容であった「裸体」に対する文化の違いに当時の日本が焦りを感じていたことを初めて知りました。
「体育会系」という風習の生い立ちというテーマも今まで触れる機会はありませんでした。それが政治的な背景で生まれ育った概念で、また体育会系というのが縮小傾向にあるのもまた政治的背景。不思議なつながりに翻弄されるさまは一つのストーリーとなっています。
 スポーツをプレイと捉えるのではなく人間形成であったり教育の一環として捉える日本ならではのスポーツ感にも、時代の背景が潜んでいることに気づかされました。
 明治維新から戦争まで動乱の近代日本の歴史を通して見る身体には、その時々の日本の問題点が隠されていました。そしてそれらは過去のお話ではなく今の時代にもつながるテーマがいくつもありました。現代の問題を読み解くカギは、知られざる歴史にこそあるのかもしれません。

(辻田 浩志)

出版元:大修館書店

(掲載日:2020-12-09)

タグ:近代 身体 日本 
カテゴリ 身体
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アスレティックボディ・イン・バランス
Gray Cook 石塚 利光 菊地 真也 鈴木 岳 友岡 和彦 山下 貴士

 本書を読み進めるうちにイメージしたのは自動車です。もし自動車のタイヤがねじれていたら、もし自動車の車軸がぶれていたら、高速で走れば走るほど故障や事故の可能性は高くなります。ともすればパワー中心の性能に目がいきがちですが、それはバランスがとれているという前提があってこその話です。
 本書の特徴は、そのような身体のバランスから始まるトレーニングの順序の重要性を説いたところにあります。パワーやスピードを得るためのトレーニングは重要ですが、まずその前提となるバランスを整えてからパワー、スピード、アジリティを高めていき、最後に競技に必要な動きを高めるという手順は合理的です。
 単にパフォーマンスの向上だけではなく傷害の回避や競技者の潜在的な問題点の洗い出しに役に立ちそうです。筋肉や関節の役割を明確にし、それらのつながりを把握するという取り組みは大きな意義があります。今まで漠然と鍛えていた身体の部位も、役割と他の部位との関連性がわかれば、おのずとトレーニングの目的も明確になり、自分の身体とその動きにも理解が広がるはずです。

(辻田 浩志)

出版元:ブックハウス・エイチディ

(掲載日:2020-12-16)

タグ:身体 バランス 評価 
カテゴリ スポーツ医科学
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ことわざ比較の文化社会学 日英仏の民衆知表現
金子 勇

 本書は日本語のことわざ・英語のことわざ・フランス語のことわざをそれぞれ比較し、筆者の評論が続くという形式で書かれています。感想として国が変わっても似た表現というよりもほぼ同じ表現をしていることわざの多さに驚きました。
 「ことわざ」とは、風刺や教訓などを盛り込んだ言葉です。国や文化が変われば当然表現も変わるはずですが意外に類似のことわざが多く、洋の東西を問わず生きていくうえで気をつけないといけないことはさほど違いはないことに気づかされます。もっとも類似性の高いものを集めてきたということも考えられますので、多少は割り引いて考えた方がいいかもしれません。
 タイトルの通り本書はことわざの比較がメインではなく、文化社会学の方が主体となります。この着想は実に新鮮で、ことわざというフィルターを通じて文化社会学を語るという珍しいスタイルになっています。とりわけ筆者が専門分野とする項目では迫力を感じる論調になります。その反面社会学の範疇を通り越してお雑煮やベンチャーズ・王貞治の一本足打法などその時々の風俗についても話題が広がり、お堅い部分と穏やかな部分とのギャップが筆者の人となりを表しているように感じました。
 ことわざは古い時代から受け継がれてきた教訓ですが、現代の時事問題と重ねることでこの時代の課題も浮き彫りになり、昔の言葉が今の時代の言葉として生命を持つことが改めてわかりました。2020年を象徴する新型コロナウイルスの話題が昔からの言葉で表現されていましたが、ニュースなどを読むよりもリアルに感じてしまいました。

(辻田 浩志)

出版元:北海道大学出版会

(掲載日:2021-01-04)

タグ:ことわざ 
カテゴリ その他
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日本武道の武術性とは何か サピエンスと生き抜く力
志々田 文明 大保木 輝雄

 武術は戦や狩猟の中から生まれたもので、戦の相手や動物を殺傷することを目的としていました。ところが徳川の安定した時代になると戦う機会もなく、一番必要とされた戦闘スキルも活躍の場を失います。軍隊でもあり兵士であったはずの武士も、その役割が政治であったり行政であったり仕事の内容も変わりました。そんな時代に武術に身が入るはずもなく、武術そのものの価値なり目的なりが見失われそうになりつつあるとき、新たな目的や価値観を見出し、戦闘の術から身心を鍛えるための武道へと変わっていくさまを学術的に記したのが本書です。
 価値観はその時代で変わるものですが、ここ200年ほどで「人権」という概念が生まれ、人を殺傷する行為は、すなわち人権侵害であり「暴力」と呼ばれ社会的に嫌われる行為となりました。もちろん私たちの時代は生まれながらに人権を持っていますので、ある時代から「人権」や「暴力」という概念ができたというのは驚かされました。それ以前の時代背景では敵をやっつけて戦に勝つということは名誉なことであり、それが「暴力」と呼ばれ否定されるという逆転の時代の中でどうやって武術の生き残りをかけて新たな価値の創造をしていくかが1つのテーマとして書かれています。
 戦うことこそが武術・武道の中心的要素なわけですから、精神的な修行とともに「武術性」にこだわるのはもう一つのテーマになっています。近代においてはスポーツとして存続している武道もありますが、「武術性」「精神修養」「怪我や事故を防ぐ」「暴力性の否定」などは今の時代も重要な問題点として議論されています。
 時代時代の環境にアジャストしなければ生き延びることができないという点で、武道もまた生物同様の難しさがあることを教えられました。中には、消えていった武術もあるはずです。文化や芸能もまた然り。長い時代を生き続けるものもあれば、ひっそりと消えていくものもあったでしょう。本書の核になるのは「臨機応変」という姿勢だと感じました。変化することで生まれる問題点も上手く取り込んでいくたくましさと知恵こそが最も学ぶべきところでしょう。


(辻田 浩志)

出版元:青弓社

(掲載日:2021-01-21)

タグ:武術 武道 
カテゴリ その他
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あめつちのうた
朝倉 宏景

 舞台は甲子園、そしてグラウンド整備の阪神園芸。ここまでは実在します。登場人物は架空の人。すごくリアルな雰囲気の中で物語は進みます。主人公は高卒一年目新入社員の大地。一年先輩の長谷は意地悪で元高校球児。甲子園でビールの売り子をしている真夏は重い病気を患った過去があり、プロの歌手を目指しています。大地の高校時代の同級生一志は同性愛者で大学の野球選手。18歳19歳の若者四人の物語です。
 登場人物はいたって普通の人。特別な人はどこにも登場しません。4人が4人とも夢があり、悩みがあり、葛藤があります。どこにでもいそうな若者たちばかりです。しかし人の数だけドラマがあり、身近に感じられる彼らだからこそ物語に入り込んでしまいました。主人公はグラウンドキーパーという仕事を通じて成長し仲間との関係を深めていく展開に、一つずつ小さな感動を積み重ねながら読みました。何気ない小さな感動の積み重ねがクライマックスに近づくほど大きなものになっていることに気づきました。
 阪神園芸の先輩社員の甲斐の言葉がこの物語の核心部分ではないかと感じました。「結果として感謝されることがあったとしても、それを目的にしたらあかん」「それぞれの持ち場を必死になって守っているだけ。それで給料もらってる」この言葉こそ本書の核心なのかもしれません。世の中で働いている一人一人がさほど感謝されることもなく、黙々と自分のやるべきことを必死でこなして過ごしている。作者はそんなことを語りかけたかったのかもしれません。だからこそ素直にすべての登場人物に共感でき、この作品を読まれた方にも自分自身を投影されながら読まれる方も多いのではないかと想像しました。
 登場人物のギクシャクした人間関係も最後には心でつながる形で終わったのはすごく救われた気がしました。4人がそれぞれの生き方に対し、まっすぐ前を向いて歩きだすところで物語は終わります。何となく彼らと別れがたい気持ちが強くなりました。続編ができればぜひ読んでみたいです。さわやかに吹き抜ける一陣の風と共に、土のにおいが鼻をくすぐる読み心地が残りました。とても気持ちのいい一冊です。


(辻田 浩志)

出版元:講談社

(掲載日:2021-01-25)

タグ:物語 
カテゴリ フィクション
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脱力のプロが書いた!「動き」の新発見
広沢 成山

 本書のテーマは「脱力」。むかしから興味のあることだったので読んでみると、最初に書かれていたのは物事を習得するときの心得みたいなお話。そして第二章では身体についてのお話。「脱力」について知りたいと思っていた私には肩透かしを食らった格好です。しかし振り返って考えてみれば筆者は武道家です。単にHow to本みたいな知識の切り売りは御免という意識を感じました。何かを会得するにはこちら側の気構えであったり、基礎知識などの土台が必要であって、そこの部分を飛ばして得たものは表面上のことしかありえないと反省しました。
 すごく表現がわかりやすく簡単なことのように書かれていますが、その一つ一つには深遠な事柄が書かれています。200頁ほどの単行本ですから深堀していたらとんでもない量になりそうな気がします。簡潔にまとめられたその奥には、読み手の想像力も試されているような感じさえします。「余白を活かす」という項目では、書道の作品を見るとき黒く書かれた文字だけではなく白い余白にも意識を向けなければならないというくだりがありました。こういった表現は実に哲学的。同時に本書を読むとき連なる文字だけを見るのではなく行間もしっかり見ろという筆者のメッセージと受け止めました。
「脱力」については丹田の機能を中心とした解説がわかりやすく書かれています。しかし実際に「脱力」を会得するには、本書のあちらこちらにちりばめられた必要事項を理解してこそ身につくものなのかもしれません。簡単そうに書かれた難しい本でした。

(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2021-06-07)

タグ:脱力 武道 
カテゴリ 運動実践
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近代スポーツの誕生
松井 良明

 イギリス発祥のスポーツは数多くありますが、イギリスのスポーツの歴史を紐解くことでスポーツそのものの歴史が見えてくるかもしれません。スポーツといっても近代におけるスポーツとはずいぶんイメージが異なるものであることがわかります。本書においては「闘鶏」と「拳闘」に焦点を当て、近代スポーツとは異質なスポーツの原点を解説し、スポーツの変遷がまとめられています。
 本書のカギとなるワードは「ブラッディ・スポーツ」。今の時代なら野蛮だと顔をしかめる方も多いとは思いますが、「流血」こそが人々が熱狂する要素だったようです。18~19世紀とは価値観も異なりますが、大っぴらに言えなくなっただけで人は血なまぐさいことが好きなのかもしれません。また今の時代、動物愛護の精神が社会規範にまで高まりましたが、キツネ狩りや闘牛などが行われてきたヨーロッパにおいてはアニマルスポーツは当然の存在だったようです。本書は単純にスポーツの歴史だけを見るものではなく、当時の社会の中のスポーツとして書かれていますのでスポーツを取り巻く環境がリアルに見えるのが大きな特徴となります。それとスポーツに向けられる興味が娯楽であったり賭博であったりスポーツそのものだけではなく付随する要素がスポーツのあり方に大きな影響を及ぼしているのがわかります。現代においても賭博という要素は法律上で枠組みが決められてはいますが、決してなくなったわけではありませんので現代にも通じる問題となります。
 人間の野蛮な一面も、昔の問題として切り捨てることはできません。それでもジェントルマンとして理性を保とうとする社会的なジレンマは今の時代にも共通するのであり、人間の本性と理性が拮抗する中でスポーツが変化を伴いながら存在してきたという歴史。あくまでも過去のイギリスが舞台として書かれていますが、むしろこれからのスポーツのあり方にも関わる歴史なのかもしれません。
 価値観は時代とともに変わります。未来のスポーツが現状のままではないことは本書に書かれた歴史を見れば想像できそうです。100年先200年先のスポーツがどのような変化を遂げるか気になってきました。

(辻田 浩志)

出版元:講談社

(掲載日:2021-06-15)

タグ:スポーツの歴史 闘鶏 拳闘 
カテゴリ その他
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勝者の呼吸法 横隔膜の使い方をスーパー・アスリートと赤ちゃんに学ぼう!
森本 貴義 大貫 崇

 呼吸法に関する本はいくつか読みましたが、運動器としての解説ではもっとも詳しい本だと思いました。その内容はとても専門的で、ネットで調べながら読み進めていたので読み終えるのに時間がかかりました。呼吸を扱う本にはヨガや瞑想など精神的な内容のものもありますが、本書はいわばその対極になりそうです。
 アスレティックトレーナーのお2人の共著で、現場でアスリートを通じた知見にはかなりの説得力があります。単に呼吸そのものだけではなく、体幹の操作にかかわる生理としての呼吸であったり呼吸と身体トラブルとの関係性など、話が広範囲に及びます。横隔膜が左右非対称であることも初めて知りました。
 呼吸のお手本が赤ちゃんであるとし、成長して大人になる過程で次第に呼吸がうまくできなくなるというのも興味深いところです。
 巻末に紹介されているいくつかのエクササイズも、実際にやってみると思ったほどうまくできませんでした。今まで無意識にしていた呼吸に私なりの悪いクセが染みついていたということでしょう。読むだけではなく実際に自分の呼吸法の問題点を認識できたのはよかったです。

(辻田 浩志)

出版元:ワニブックス

(掲載日:2021-07-12)

タグ:呼吸 
カテゴリ コンディショニング
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スポーツ医学の立場からみた小学校の体育 100年耐用性のある運動器を育てるために
中嶋 寛之

 タイトルの通り、本書は小学校で行われている体育をスポーツ医学という専門的な切り口からどうあるべきなのかを考察した内容となっております。そしてサブタイトルが「100年耐用性のある運動器を育てるために」とありますが、これこそが本書の裏テーマと申し上げていいでしょう。小学生と100歳を超える高齢者という時間軸においてもかけ離れた世代のつながりこそが、これからの時代を生きる我々が抱えるであろう重要な問題点であり、その問題点を解決すべきもっとも重要な時期が小学生の時代であるという指摘がなされています。
 そう遠くない将来、平均寿命が100歳を超えると言われていますが、長寿という喜ばしいことである反面、100歳を超えたときの運動器がどのような状態であるかという切実な不安が浮かんできます。近年サルコペニア(筋肉減少症)やロコモティブシンドローム(運動機能障害による移動機能の低下)という問題が話題になっています。これらの中心的問題は、高齢者の運動能力の低下にあります。本書は高齢者固有の問題として捉えるのではなく、小学生の体育に問題解決の糸口を求めています。
 高齢者が運動習慣を身につけることにより体力低下を少しでも防ぐという解決法も重要ではありますが、人生において身体能力を高められるのは成長期であり、その時期に「運動嫌い」や「体育嫌い」をなくすような体育授業をするという提案がなされています。一つ一つ理屈を考えてみれば小学校のおける体育教育の重要性は理解できるわけですが、現実問題として児童それぞれの運動能力の個人差はあり、苦手だから運動そのものが嫌いになるのは自然なこと。もっとも身体を動かすはずの小中学生のころに嫌いになった運動を大人になってやりたくなるというのは考えづらく、そのままの流れで大人になり高齢者になり100歳を超えたとしたら、その人たちの運動能力が快適な生活を実現させるに足りうるレベルを維持できるかを考えればかなり不安になってきます。
「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、これから大きく成長しようとする子供時代に運動の必要性を理解してもらい、運動が楽しいものだと子供が感じられる体育教育をつくり出すことこそが100歳時代に必要なことだと説きます。
 高齢になり運動能力が低下したり痛みを抱える中で運動をするのには、困難が付きまといます。むしろリスクを抑える対策は早いに越したことはありません。「体を育てる」と書いて「体育」というのは50年前も今も同じです。しかしながら平均寿命が70歳代から80歳代を超え、いずれは100歳を超えようとしている日本の将来。「体育」の重要性はさらに高まりそうです。これは私たち一人一人が将来直面する可能性のある問題であることを忘れてはいけません。

(辻田 浩志)

出版元:ナップ

(掲載日:2021-09-22)

タグ:体育 ロコモティブシンドローム 
カテゴリ スポーツ医科学
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カラダの意外な見方・考え方
林 好子

 近年、動作解析などが進み身体の分析は様々な角度からなされるようになりました。自分の身体は自分の思うがままに動かせる。そんな風に思っていたら実はそうではなくてうまく身体を動かす能力がない、あるいはバランスの悪さゆえに思っていた動きと違うことをしているということに気づきました。医科学は身体の内から外からその原因を明らかにしようとしています。
 正直多岐にわたる身体の見方は出尽くした感があったのですが、本書のタイトルの通り身体に対する「意外な見方や考え方」がまだまだあるようです。マクロとミクロとの見方の違いなのかと考えながら読み進めていくとどうやらその考え方も正しくなさそうです。
 理学療法士・合気道・アレクサンダーテクニークというそれぞれ違った目線は自由奔放ともいえる身体の見方を提案してくれました。純粋なアレクサンダーテクニークの視点でもないので、どこから何が飛んでくるかわからない期待感を持ちながら読んでしまいました。
 それぞれの項目で筆者のコラムが登場するのですが、ユニークな発想から生まれる身体感はときおり考え込んでしまいました。その人のそのときの心理状態で同じ時間が長く感じられたり短く感じられたりして、その違いにより身のこなしが変わるという解説もありました。これは納得です。余裕のあるときの1時間と焦っているときの1時間ではできる動きに大きな差が出るのはわかります。しかし今までそういう違いを身体を通して見ることはしていません。そういう発想がなかったからです。
 やっとここで気づいたのは「カラダの意外な見方考え方」というタイトル表記のうち「意外な」というワードだけ異様に大きく色も変わっています。こんなところにしがみついて悩む人はいないだろうと思いますが、スポーツ医科学の身体の見方と筆者の身体の見方の違いがわかったような気がします。前者が純粋に身体や動作の分析であるのに対し、後者は何か別の要素と身体を絡めた上での見方をされているのではないでしょうか。心理・時間・文化・気候など本書で述べられていることは純粋な身体についての考察にとどまらず動きのバックグラウンドを見過ごしていないところに、本書のユニークさであったり特徴があるのだと感じました。どちらがよいとかいう問題ではなくこういった発想は時には現実に即していることもあり無視できない場合もあるでしょう。
 環境まで身体を見る要素に加えてしまうと発想は無限大になりそうです。身体を解き明かすためのヒントはいくらあってもいいと思います。

(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2021-10-11)

タグ:見方 文化 
カテゴリ 身体
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ランナーのためのメンテナンス・トレーニング 競技力向上につながる「ケガしない体づくり」
中本 亮二

 近年トレーニングが変わりつつあります。パフォーマンス向上を目的として身体を鍛えるという点においては今も昔も変わりありませんが、トレーニングそのものよりもトレーニングを行う前の段階が飛躍的に変わってしまい、そしてまだこれからもさらなる進化が期待できそうな気がします。「トレーニングを行う前の段階」とは「いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように」という5W1Hのようなトレーニングの意義を細かく整理したうえでもっとも効果的なトレーニングを実践されているということです。とにかく人一倍鍛えるという姿勢そのものは悪くありませんが、ケガのリスクや鍛えるべき選手の状態とトレーニングの内容、目的に対する有効性など多くの問題点を考慮することがなければレベルアップの度合いに疑問符が付きます。近年はそういった問題を直視することでトレーニングの成果が問われる時代になったということなのでしょう。
 前置きが長くなりましたが、本書は「ランナーのためのメンテナンス・トレーニング」というタイトルにまず対象者や目的が盛り込まれています。しかも「パフォーマンス向上」という包括的なものではなく「ケガをしない体づくり」という絞り込みが表紙からも伝わります。スキルアップなどを目的とした専門的トレーニングの土台という位置づけで「メンテナンス・トレーニング」の必要性を説かれています。ケガをしたら専門的な技術も水泡に帰すことは誰もが知っていることではありますが、それを具体的に示すことは意外に難しいことなのかもしれません。それこそが本書の意義ではないかと思います。しかもこういった説明は「はじめに」という序章に集約されています。さらにランナーの身体づくりに必要な項目の整理も本編に入る前に書かれています。お読みになる際はぜひ序章をしっかりお読みいただき、ご理解いただきたいです。そうすれば本編で紹介されるエクササイズの数々がブラッシュアップされたものになることでしょう。
 本編で紹介されている多くのエクササイズには以前から知っているものもありました。ただそれぞれのエクササイズには「目的、回数、頻度、タイミング」が必ず示されています。これが新たな価値を付与していると思います。今まで何となくやっていたトレーニングの中にもランナーが抱えている問題点の解決の糸口になりうるものに変わっているかもしれません。目的がハッキリすれば自ずとやり方も変わってくるでしょう。傍目から見たら今までと同じトレーニングに見えても、当事者には今までとは全く違ったことをしているくらいの意識が持てるでしょう。
 あくまでも本書は「ランナーのための」という限定がかけられてはいますが、お読みいただき本書の主旨が理解できれば、この考え方はあらゆるスポーツにも共通するはずです。きめ細かく紹介されたエクササイズも読みごたえがありますが、まずは冒頭29ページまでをしっかりお読みいただければと思います。

(辻田 浩志)

出版元:ベースボール・マガジン社

(掲載日:2021-10-23)

タグ:トレーニング ランニング メンテナンス 
カテゴリ トレーニング
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肥満男子の身体表象
Sander L. Gilman サンダー・L. ギルマン 小川 公代 小澤 央

 今の時代を生きる私達にとって「肥満」とは健康上の問題であったり、容姿の問題であったりします。ダイエット関連や健康関連の書物はあふれかえるくらい存在しますが、「肥満」を社会的な観点から論じる書物は初めてお目にかかりました。体形という要素はある程度の距離をおいてもそれなりに判断がつくために、その人となりをイメージするには最もわかりやすい要素だともいえるでしょう。そのイメージは単に体格の問題とはかけ離れた人格であったり生殖能力に対するレッテルにまで範囲が広がり、今の時代でいうところのエビデンスがない風評程度の社会的評価がまかり通っていたようです。もちろん今の時代にそういったことがないといえるかといえば答えはノー。
 本書には実在の人物から架空の人物まで様々な角度からの「肥満に注がれる目」を解説します。肥満に対する世間の目は時には不合理であったり差別的であったり、しかし一方で根拠もなしに妙に納得できることもあります。子どものころからアニメや漫画などで肥満体の登場人物といえば決まって食いしん坊であったり、鷹揚な性格であったりするイメージが強く、それに異論を唱える人も見たことがありません。現実世界には神経質な肥満体の方もいらっしゃるはずですが、あたかも肥満が人格を表す記号のように描かれていたのは否定できないことです。
 過去の物語においては生々しいほどの偏った人格の表象としての肥満が描かれていますが、レッテルを張るという点においてはアニメに登場するほのぼのとしたのんびりした性格と何ら変わりがなく、所詮は五十歩百歩の文化的表象と言わざるを得ません。そして彼らの地位はその物語において決して尊敬されるべきものではなく、快挙を成し遂げたとしても「肥満なのにスゴイ」という表現が多く肥満そのものの社会的地位は下位におかれてきたという指摘は納得です。
 さらに本書は過去の「肥満に対する目」から、将来的な扱われ方をも危惧します。肥満に対する目は非合理的で差別的でジェンダー論とオーバーラップさせた見解もあながち大げさともいえなくないような気がします。「人は見た目が9割」という言葉が数年前に話題になりました。これは言葉が流行ったというのではなく人々の潜在意識がそのままだったということに気づくことから、問題解決の糸口が見えてくるのかもしれません。

(辻田 浩志)

出版元:法政大学出版局

(掲載日:2021-12-08)

タグ:肥満 
カテゴリ 身体
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図解でわかる! イップスの克服 個別メニュー作成と段階的トレーニングで治す
谷口 智哉

 イップスに対する取り組みは様々な角度からなされているようですが、イップスの明確な定義や治療法は確立されているとは言えない状況です。むしろ問題なのはその不明確さゆえに曖昧な認識に立脚する対処法でさらに深みにはまることかもしれません。昨今、多くの研究者によりイップスの原因やパターン、そして克服の方法論が整理されつつあるのではないかと感じています。
 本書はイップス研究家を名乗る筆者が独自の視点でイップスを論じています。幽霊の如く得体の知れないところにイップスの怖さがあるように感じていますが、論点を整理した上で解説をされているので本書を読むことで、「わからないものに対する恐怖や不安」というものが軽減するのではないかと思います。
「イップスとは何か?」「イップスのメカニズム」「具体的な例」「イップスのレベル」「克服するためのメニュー」と順に解説され、理解が容易な点はイップスに悩むプレイヤーにとっては心強いでしょう。とりわけ視点が研究者の押し付け的なものではなく、プレイヤーに寄り添う感じで一歩ずつ前に進むような取り組みなので、イップスに悩むプレイヤーからの共感が得られそうです。
 もっとも世間では様々な観点からの取り組みがありますので、筆者の意見が将来的にコンセンサスを得られるかどうかはわかりませんが、読みやすさやわかりやすさという点において読んでみる価値は十分あると思います。
(辻田 浩志)

出版元:BABジャパン

(掲載日:2022-07-13)

タグ:イップス 投球 
カテゴリ 身体
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生き物の死にざま
稲垣 栄洋

 すべての人にドラマがあります。同じようにすべての生き物にも等しくドラマがあります。ドラマの見どころといえばやはりクライマックスシーン。本書は様々な生き物のクライマックス、つまりは「死」に焦点を絞り、知られざる生き物の死から彼らの生きざまを描いた作品です。
 様々な種類の動物を見ることができる動物園の動物たちにはなんとなく生活感というか営みみたいなものを感じないのは、彼らの生活のごく限られた部分しか見ることができないからでしょうか。本書を読んで初めて知る、壮絶で生々しい死にざまは私たちの安っぽい感動さえも許されないような過酷でもあり神聖ともいえる領域なのかもしれません。
 死にゆく生き物たちが守ろうとするのは彼らの遺伝子。つまり子孫を残すために命を差し出す潔さを感じるのですが、そういったものを「愛」と呼ぶのは人間だけで、すべての生命体は遺伝子に組み込まれたシステムの中での行動と言ってしまえば味気なく感じてしまいます。
 生物の死には自然の法則に縛られるものもあれば、人という存在が関わることで死を前提として育てられる生き物もいます。食肉のみならず穀物や野菜も人に食べられる目的で誕生するわけではないのですが、私たちの胃袋に入ることが運命とされた生き物の存在は忘れてはいけません。我々人類も食物連鎖の中に組み込まれた存在ではありますが、それを経済活動としてほかの動物とは異なる営みをすることに消化しきれないモヤモヤ感が残りました。これも人間が持つ業の一つなのかもしれません。
「個」として生き延びる難しさ、「種」として命をつなげる難しさ、そして人間の関わり合い。多くの疑問点を心の中に残しつつ、読み終えました。
(辻田 浩志)

出版元:草思社

(掲載日:2022-08-08)

タグ:生命 
カテゴリ 人生
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ONE TEAMのスクラム
松瀬 学

 私自身ラグビーのプレー経験といえば高校生のころ体育の授業でかじった程度で、ラグビーが体格・体力に恵まれた力と力のスポーツという印象を植え付けられた程度で、それ以上興味がわかなかったというのが正直なところです。ところが2019年のワールドカップで日本代表が活躍し、改めて興味を持ったにわかファンになってしまったようです。
 私がラグビーに対し新たな認識を持ったのは単なる力と力のぶつかり合いで日本代表が活躍したのではなく、力プラス頭脳で勝ち進んだことで、今までラグビーに対して持っていたイメージが一新されたからにほかなりません。
「ONE TEAM」というワードが単なる精神論ではなく、戦術・戦略も含む一体感のあるチームという具体的な機能面まで含んだものだったことに興味を持ちました。
 本書は「ONE TEAM」が具体的にスクラムにどう機能したかに焦点を当てた内容です。ただ技術論だけではなく選手個々の解釈やイメージまで掘り下げられていますので、そのときのチームの様子がリアルにイメージできました。選手やコーチのそれぞれの捉え方が集結して実際のプレーに結びつく展開はチームの一員になったかのような感覚に陥りました。
 まったくのラグビーのド素人がなんとなくわかったような顔をして頷ける戦い方の解説は必読。実は何一つわかっていないのでしょうけど、読み終えた満足感や興奮は「あのとき」を思い出させます。
 私のように読了して満足を得る人もいるでしょうが、「ONE TEAM」の発想・着眼をそれぞれのフィールドに持ち込んで展開するつわものもいるかもしれません。読み手の考え一つで「ONE TEAM」を構築できるかもしれません。
(辻田 浩志)

出版元:光文社

(掲載日:2022-08-25)

タグ:ラグビー チームビルディング 
カテゴリ スポーツライティング
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インソールマニュアル 第2版 姿勢と歩行を快適にする運動連鎖アプローチ
安倍 浩之 中川 法一

 インソール(足底板)は足の操作に変化をもたらすことで姿勢を制御することが知られています。本書は題名の通り「インソールのマニュアル」として様々なポイントから解説されています。本書のスゴイところはインソールの宣伝ではなく学術的な観点から効果を示すだけにとどまらず、インソールに関する学術論文の紹介や、足底部から股関節までの機能解剖学などかなり踏み込んだところまで解説されています。その点で宣伝本とは一線を画します。足全体の構造や機能に関しても、具体的かつきめの細かい説明があり、インソールの前提部分だけでも読みごたえがあります。
 実際の事例にも幅広く言及されているので理論に対する裏付けも万全です。インソールでも熱可塑性インソールが本書の中心となるのですが、従来のインソールとヒートプラスティックを使用した熱可塑性インソールとの違いとそのメリットも詳しく解説。
 インソールを利用することで動的な姿勢制御を可能にすることに関するエビデンスもしっかりしています。足底に変化をつけることで足のみならず身体機能が向上するという機序を学ぶにはうってつけなのはいうまでもありませんが、足底に絡む身体機能の問題点を学びたい方にもお読みいただきたい一冊です。
(辻田 浩志)

出版元:三輪書店

(掲載日:2022-08-31)

タグ:インソール 
カテゴリ スポーツ医科学
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定年筋トレ
森谷 敏夫 吉田 直人

 私自身これを書いている時点で61歳になります。同級生の多くは会社を定年し、新たな人生を歩んでいます。以前から気になっているのは同年代が集まると身体の話題、とくに病気の話が増えてきました。私はそういうのに反発していたのですが、ここ数年体調がすぐれないこともあり、反発どころか率先して病気の話をしてしまいがちです。まだまだそんなに衰えてはいないと思いつつも、健康不安がよぎることもしばしば。それが60代のジレンマなのかもしれません。
 本書は「衰えに抗う」というのがテーマになっています。「アンチエイジング」といえば格好よく聞こえるのですが、現実は極めて切実です。「若返る」というポジティブな感覚ではなく、現実にある「不安を打ち消したい」という感覚の方がピッタリのような気がします。
 本書の解説は私らの年代にとって「あるある」ばかり。そのせいか、乾いた土に水が染み込むように書かれた内容が入ってきました。そしてどうすれば不安が解消できるのかについて明確な答えがありました。運動を始める前から高揚感がわいてくるようです。
 しかし実際に何をどうすればいいのか、現実問題としてそこがもっとも高いハードルなのかもしれません。この年になって学生時代のクラブ活動のような運動をするわけにもいきません。具体的な方法論もそれぞれの人に可能な選択肢が用意されていました。ジムに通ってのトレーニングもあれば自宅で一人でやれる運動もあります。そこからさらに踏み込んだところまで解説されているのはありがたいことです。
 さらにトレーニングに付随する話題も豊富。活性酸素・糖尿病・食生活などの問題点にも持論を展開されています。もちろん世の中には様々な意見もありますので、何が正解なのかは判断しかねますが、少なくとも筋トレをめぐる問題点を知るという意味では意義があると思います。
 実際にその年代になって経験してみないとわからないセンシティブな部分まで丁寧に書かれているのは、同じ目線を意識されているからだと思います。
(辻田 浩志)

出版元:ワニブックス

(掲載日:2022-09-21)

タグ:高齢 トレーニング 
カテゴリ トレーニング
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まあちゃんの文芸評論・スポーツ論ノート
山村 正英

 文芸評論として書かれている本書には個々の文芸・文学から時代や歴史が垣間見えます。独仏英文学、ヨーロッパ言語研究家、文筆家である筆者はその道の専門家ですので、それぞれの文学を紹介されるその奥にはそれらの成り立ちにも踏み込まれています。
 わずか70頁に満たない本の中に百科事典並みの奥行を感じてしまったのは、サラッと触れられている時代背景や当時の思想が気になってしまい、いろいろ調べているうちに時間が経過したからかもしれません。
 スポーツ論に関しても総論部分で歴史的にスポーツが抱えてきた問題点に触れられていました。スポーツの語源であるラテン語の「deportare」も調べてみればスポーツの本質的な役割が見えてきましたし、「スポーツと賭博」「プロ・アマ問題」「戦争とスポーツの関連」などについてもサラッと数行で書かれてはいますが、それぞれで一冊ずつの本が書けるほどの大きな問題といえるでしょう。
 流し読みすれば1時間もあれば十分読めますが、どこかではまってしまうと離れがたい面白い本だと言えそうです。
 余談ではありますが、「書く」という表現方法の伝達範囲の広さと、時間の経過にかかわらず存在する特性により、文化にまで昇華したのではないかと想像を働かせました。
(辻田 浩志)

出版元:創栄出版

(掲載日:2022-10-03)

タグ:評論 
カテゴリ その他
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野田式足裏トレ
野田 隆基

 私ごとで恐縮ですが、解剖生理学を勉強するときについ足部をおろそかにしてしまう傾向があります。身体の末端であることも理由の一つかもしれませんが、足部の構造の複雑さと機能の難解さにテンションが下がっていたのかもしれません。本書を読む前段階で苦手意識を感じていました。そんな私にとってありがたかったのは興味深いテーマにそって足の構造・機能を解説されていたので、暗記ではなく納得しながら読むことができたことです。様々な項目に対する関節や筋肉の存在意義やその重要性を知ることができたのはよかったです。
 足に興味を持つ一般の方にとって理解しやすい解説と面白いテーマに、本書の読みやすさが表れています。筆者が力説される身体を支える重要な部分としての足部を、身体全体とのつながりの中で紹介されるトレーニングは「足のため」としてではなく「身体全体のための足」であることを実感させられます。
 おそらく本書にある「足裏トレ」は長期的な継続が必須となるでしょう。それはやはり足だけの問題ではなく身体全体の動きに影響する段階まで続ける必要があるからです。
 本書のトレーニングはアスリートが身体操作の基本として活用することもできそうですし、高齢者が不自由を感じることなく歩くためにも有効だと感じました。
(辻田 浩志)

出版元:徳間書店

(掲載日:2022-10-26)

タグ:足裏 
カテゴリ トレーニング
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ケリー・スターレット式 「座りすぎ」ケア完全マニュアル 姿勢・バイオメカニクス・メンテナンスで健康を守る
ケリー・スターレット ジュリエット・スターレット グレン・コードーザ 医道の日本社編集部

 私は手技療法の仕事をしていますが、腰痛を訴えるクライアントの圧倒的多数が立ち仕事の方か、事務職やドライバーのように座る姿勢でのお仕事で、スポーツ選手のように激しい動きをなさる方よりも一定の姿勢を長時間こなす人の方が腰痛になりやすいという現状を見ています。知らない方には座っていると楽なように見えるようですが、かかる荷重負担のバランスの悪さや姿勢の特殊性からも、長時間の座位は様々な影響を与えます。
 本書は「座りすぎ」の問題点を分析的に指摘した上で、身体にかかる負担を軽減するための方法論を様々な角度から解説しています。
 まず座位の問題点を細かく指摘していますが、現実的に座ることは日常よくありますので、座ることそのものを否定することはできません。そういった職場環境でちょっとした工夫を加え負担を軽減できるようで、現実に沿った形での提言があるのはありがたいです。さらに身体の問題点をエクササイズで回避する方法論もあり、いわば環境面と肉体面という内外からのアプローチがあります。読者が取り入れることができる方法がいくつも紹介されていますので、可能なものを選択しながら取り入れていけるのも本書のよさだといえるでしょう。
 それぞれの解説がバイオメカニクスに沿ったものですが、読み手の知識や興味で本書の読み方を変えてみるのも1つの方法だと思いました。また紹介しているエクササイズも簡単にオフィスでできるものや、器具を使用しても簡単に手に入りそうなものが多いので、実行することに対する負担はあまりなさそうです。
 容易に方法論を与えられても、理解や納得のない中での継続は困難だと思います。「座りすぎ」の何が悪いのか、身体にどういう負担がかかるのか、その都度その都度読み返してみて実行するのが一番長続きしそうな気がします。
(辻田 浩志)

出版元:医道の日本社

(掲載日:2023-01-20)

タグ:座りすぎ 
カテゴリ 運動実践
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ことわざから出会う心理学
今田 寛

 大学で心理学を履修しました。様々な履修科目の中でもっとも興味があった学問でした。「人の心理がわかる」というすごく単純な興味は幻想に近いものだったというのが、実際に授業を受けた感想です。私が授業で学んだ心理学は実に淡々とした研究結果の集積みたいなものがほとんどで、私が期待していた「人の心が読める」的なHow to本によくある人の興味をそそるものとはかけ離れていたのです。
 本書を手にしたときには、ことわざに表現される状況の心理描写を書いたものだと思ったのですが、予想に反してしっかりした学術的な理論が紹介されているのに驚きました。普段よく使われることわざを、学術的な心理学の研究と結びつけるというギャップは、あたかも水と油を結びつける界面活性剤にたとえても面白いかもしれません。
 さらに本書を読むにしたがって、ことわざが主役ではなさそうなことに気が付きました。むしろ様々な研究を結びつける役割をことわざが担っているに過ぎないという感じすらしました。ひょっとしたら筆者の意図はそれぞれ異なる心理学の研究をことわざというワードで関連性を持たせているのかもしれません。ことわざを読み解くツールとして心理学を引っ張り出してきているんだと思い込んで読み始めた私は、筆者に一本取られたのでしょうか。
 私が学生のころ学んだ心理学はあくまで基礎中の基礎であり、単品の研究を教わっただけで、それらの関連性がなかったがために面白みもなく興味が薄れていった記憶があります。ところが本書のように馴染みのあることわざに絡ませて小難しい心理学の知識を展開することで、身近なものとするばかりかそれぞれ単品の研究がことわざを介して関連性を持たせようという筆者の思惑を意識せずにはいられませんでした。さらには一つのことわざに関連して数多くの研究が登場するところは、筆者の懐の深さを垣間見た気がします。
 私が感じたことが的を得たものなのかも疑問ではありますが、ひょっとしたら私が感じ取れなかったもっと別の何かがあるのかもしれません。
 プラシーボ効果や血液型と性格など興味を引く題材が多かったので読み始めとは別の角度からの興味がわいてきました。学問も切り口を変えるだけでこんなに面白いものであることが証明されたのではないでしょうか。「活きた学問の断片」を見たような気がしました。
(辻田 浩志)

出版元:ミネルヴァ書房

(掲載日:2023-01-31)

タグ:心理学 ことわざ 
カテゴリ その他
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スキー技術の真実 理想的なターンを科学する
鈴木 聡一郎

 本書はそのタイトルの通り技術解説ではありますが、科学的な観点から技術の意味や必要性を分析したものです。私は三十数年前にレジャーとして何度か行ったことがある程度のスキー初心者でした。そんな私が読んでも本書の解説は難しい理論ではなく、ごく初歩の物理学的な解説なので驚くほど理解しやすい内容でした。
 本書を読んで思ったのは、他のスポーツと比較して決定的な違いは、スキーは初めから持っている位置エネルギーを利用して高いところから低いところに移動する際、いかにして位置エネルギーのロスを少なくするかというスポーツであることです。他のスポーツは0から出力を上げていくのが普通なんですが、まるで正反対の性質が浮き彫りになります。その上で技術や力はエネルギーのロスを防ぐためのものである点が理解できました。
 本書を読むとスキーの技術が物理学的な効率のよさを追求しているのがわかり、読めば読むほど他のスポーツからの特殊性が印象に残ります。しかし読み終えてみればエネルギー伝達の効率の問題はなにもスキーに限ったことではないと考えるようになりました。一つ一つの技術の解説ではスキーが他のスポーツとは違うイメージがありましたが、全体を通じて言えばエネルギー効率の大切さは他のスポーツも同じであり、本書のような視点でスキー以外のスポーツを考察してみても面白いと感じました。
 スキーヤーにとって必読書の一冊といいたいのですが、むしろ他のスポーツに関わる人たちが本書をお読みになったら、また違った視点で見られるのではないでしょうか。
(辻田 浩志)

出版元:合同出版

(掲載日:2023-02-08)

タグ:スキー 
カテゴリ 運動実践
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一生、山に登るための体づくり
石田 良恵

 私には、スポーツや運動といえば若い人がやるものという思い込みが以前ありました。しかし自分が高齢者のくくりに入ってしまったら「若者の特権」という意識は薄れてきました。スポーツを楽しむのは各々の体力に応じてできるのであって、それぞれのスポーツもすそ野が広い方が盛り上がるわけですから好ましいといえます。ところがケガなどのリスクは極力避ける努力をしないと後々つらい思いをすることになりますので、正しい知識を持って楽しくやるべきだと思います。
 私の周りにも山歩きが好きな人が多くいます。自然とともに体を動かすことの喜びや楽しみは愛好家にとってかけがえのないことのようです。ところが魅力であるはずの自然は時として脅威として襲い掛かることもあり、場合によっては命に関わるケースもあり、ニュースで報じられることも少なくないのが現実です。
 本書の良さは筆者の経験と研究から登山のリスクと向き合いそのために必要な体作りをわかりやすく指導されているところにあります。「一生、山に登る」というタイトルの通り、体力に不安がある高齢者にもできるというのが中心的なテーマになるのですが、体づくりの必要性を理解するところから本書は始まり、体力の下地ともいうべき体の安定性を身につけるための柔軟な体づくりをすることへと続きます。我々にすれば一にも二にも筋力をつけてと考えがちですが、筋力の前提条件からスタートするあたりは研究者の面目躍如といったところでしょうか。
 体力(筋力)づくりも、基本編と、登山の特性を説明したうえでの実用編と段階を踏んでいます。そこから登山に欠かせない持久力。さらには水分補給や筋肉をつくるための栄養素の話まで登山のすべてがこの一冊に網羅されているのではないかと思うほどでした。もちろんトップレベルの登山は別として、一般人が自分の楽しみとして行う登山としては十分な内容だと思います。
 高齢者の割合が高くなりつつあるわが国でどうやって健康を維持し、長く健全な生活を送れるかが社会問題となっています。とはいえやみくもに運動をしても危険なこともあります。本書で紹介されているトレーニングなどの情報は山に登らなくてもやっておきたいことばかり。高齢になっても健やかに過ごしたい人にはお読みいただきたい本です。そこから逆に山に興味を持ってもいいんじゃないでしょうか。
(辻田 浩志)

出版元:マイナビ出版

(掲載日:2023-03-20)

タグ:登山  
カテゴリ 運動実践
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日常生活に活かす『スポーツ科学リテラシー』
杉浦 雄策

「スタミナとは、肺、心臓、筋肉などすべての機能統合した指標(持久力)のことである」という一文を見て気づかされたのは、誰もが日常的に使っている「スタミナ」という言葉の定義。あまりにも一般的過ぎて考えたこともなかったのですがスタミナってそんな意味だったんですね。さらにスタミナの解説にとどまらずスタミナの効果と続き、話は生活習慣病へと展開していきました。ここまで広がるスタミナの話題に触れて初めてスタミナを知ったような気がしました。同様に誰もが当たり前に使っている「体力」という言葉も、スタミナに関連してスポーツから日常生活まで具体的な解説が示されています。
 自分自身の知識が「ブツ切れ」のものであることに気づくことこそがリテラシーを得ることの第一段階なのかもしれません。そこから応用できる知識が生まれてくるものだと感じました。点が線になり、線が面になり、面が立体になることこそが「日常生活に活かす」というタイトルの意味なのでしょう。
 スポーツ科学には機械的なものという印象を持っていたのですが、むしろ有機的な生物としての研究こそがスポーツ科学であると再認識しました。機械的どころか「心」とスポーツのとらえ方も精神論という一面的なものではなく、生理学や心理学という視点から身体とのつながりを探ろうとする試みから、「人として生きる」喜びや楽しみに至ることを知り、印象が180度変わりました。
 あえて言うのであれば、本書の項目はどこかで聞いて知っているものが多いかもしれません。しかし一つ一つの知識がつながりを持つことによって構築されることが「使える」知識であることを教わりました。
(辻田 浩志)

出版元:ライフ出版社

(掲載日:2023-03-22)

タグ:スポーツ科学 
カテゴリ スポーツ科学
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魅惑の生体物質をめぐる光と影 ホルモン全史
R.H.エプスタイン 坪井 貴司

「生体の外部や内部に起こった情報に対応し、体内において特定の器官で合成・分泌され、血液など体液を通して体内を循環し、別の決まった細胞でその効果を発揮する生理活性物質を指す」。本書を読むにあたって「ホルモン」のことをあまり知らなかったので調べてみたら、このような解説がありました。わかったようなわからないようなというのが正直な感想です。そして読み終えて一番最初に思ったのは、ホルモンという物質の正体がいまだにハッキリとわからないところにこそ、本書の鍵があるのだということです。
 すべての科学は、わからないものを理解するのが目的だともいえます。そのプロセスは多くの成功と失敗の上に成り立ちます。現在というタイミングで知りえた知識を、さも当たり前のように享受していてもそれらは先人の紆余曲折があってこその話で、忘れられがちな科学の道程を本書は示してくれます。
 本書はホルモンについての解説本ではなく、研究者のドラマが描かれています。ホルモンについて学術的な内容もありますが、主役は研究者とそれを取り巻く人間であるところが本書の特徴といえます。
「犯罪」「若返り」「出産」「成長」「ジェンダー」などの大きな問題に関わる物質を研究するにあたり期待が膨らむ一方で、予期しえなかったリスクもあり、科学というものが持つ有益性と危険性も表裏一体のものとして物語は進みます。本書の帯には「欲望を支配する」という文言がありますが、人々の期待の裏側には欲望が見え隠れします。純粋な科学の物語ではなく、そこに欲望という要素が加わると一気に人間臭さが加わります。
 ホルモンの歴史は決して過去の問題とはいえず、とりわけジェンダーの問題は最近になってから大きく取り上げられる機会が増えつつあります。ホルモン研究の歴史はまだまだ続編がありそうです。それは未知なるものに翻弄される物語なのかもしれません。
(辻田 浩志)

出版元:化学同人

(掲載日:2023-05-02)

タグ:ホルモン 研究史 
カテゴリ 科学
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競技力アップのフィジカルリテラシー キッズ・ユース期における動き&身体づくりの理論と実践
小林 敬和 森 健一

 かつてはプレイヤーとして高い能力を有した者や競技成績が優秀だったものが指導者となり、彼らが持つ経験やノウハウを選手に与えるという指導者像が当たり前でしたが、近年の傾向としてはプレイヤーとしてのスキルと指導者としてのスキルを別のものとして捉える傾向が強くなりつつあります。もちろん実際に経験したスキル自体は否定されるべきものではありませんが、それ自体普遍性があるともいえず、チームや個々の選手に等しく当てはまるものではありません。とりわけ少年少女期は身体的・精神的に成長途上であり、彼らの成長を促進するという役割がスポーツに求められます。
 本書はただ「勝つ」ということをスポーツというものの中心的な要素として据えるのではなく、人が人として健康に過ごし、スポーツという身体活動を通じて心理的・社会的に豊かになるための指導法が「フィジカルリテラシー」であると受け止めました。本書での「フィジカル」は、あくまでも身体活動という手段として捉えています。そして目的は、身体を、心を、考え方を、社会性を育むための取り組みであるとします。この考え方を強く意識してこそ、各論としてのエクササイズが生きてくるものだと感じました。おそらく理念ともいうべきここの部分が欠落すれば、現場で少年少女を指導する際に難しい選択を迫られたとき、大切な判断基準を失いそうな気がします。
 正直に申し上げて、読み始めでは後半に掲載された具体的なエクササイズにのみ興味を持ちましたが、読むにつれてそれでは筆者の意図することが伝わらないと感じ始めました。こういった理念にのっとり、新しい時代のコーチングは身体能力や競技能力をアップすることが一番の目的とするのではなく、あくまでも「子供たちの成長」の一手段としての位置づけであることがはっきりと伝わります。「技術を教えてやる」というのではなく「子供たちの成長や時代の変化に対応するコーチング」という一文が本書全般に通じる考え方なのだと思います。
 もちろんQRコードを利用して動画でエクササイズを見せる手法は今風で理解しやすいです。バランス、リズム、タイミング、フレキシビリティ、スタビリティ、モビリティという6つの要素を鍛える数多くのエクササイズは、鍛える目的がしっかり理解できるので納得したトレーニングで効果に直結しそうな印象が残ります。何となくやるトレーニングとは差が出るように思います。
 少子化が問題となる昨今、健全なる青少年の育成には、スポーツを楽しんでみんなでやれる環境が不可欠な要素だと思います。そしてそれが一部の子どもだけではなく、多くの子どもたちにスポーツを楽しむ文化として広がることを願うばかりです。
(辻田 浩志)

出版元:ベースボール・マガジン社

(掲載日:2023-05-10)

タグ:フィジカルリテラシー  
カテゴリ トレーニング
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社会を変えるスポーツイノベーション 2つのプロリーグ経営と100 のクラブに足を運んでつかんだこれからのスポーツビジネスの真髄
大河 正明 大阪成蹊大学スポーツイノベーション研究所

 現代においてはスポーツビジネスも組織的に成り立つ業態として認知されていますが、数十年前はまず「興行」ありきで、組織的というよりも中心的人物の個々の力によるところが大きかった印象があります。しかも得られる利益は純粋な興行収入だけではなく、相撲界でいう「谷町」のような贔屓衆やスポンサー的な企業に依存することも少なくなく、およそ「ビジネス」とか「経営」という雰囲気とは縁遠い感じでした。日本においてスポーツビジネスといえばプロ野球が筆頭格でしたが、それも親会社の宣伝広告という形式の上に成り立つもので、スポーツそのもので利潤を上げるまでに至ったのは最近になってからのことだと思います。運営と経営が分離せず経営のノウハウを持たない人が、出資者とのつながりでやっているビジネスというのが、過去のスポーツビジネスの実態であり、その時代からの変革が本書に記されています。
 本書の印象として、「経営」の対象が「スポーツ」であることを明確にした「経営学」の本という受け止め方をしました。スポーツに限らずとも経営のあり方はすべての業態において様々です。その中でも成功により近づくためには論理的な方法論が必要になります。問題点の抽出、整理、解決法など良くも悪くも様々な状況に耐えうるものが構築されることでその確率が上がるのでしょう。筆者はそれを個人の才覚として運営するのではなく、経営者が変わっても運営のあり方が継続する枠組みの構築をされたところに意義を感じました。
 スポーツ界の内在的な問題点と今という時代における周囲の環境下でどう立ち回るかという問題点に、きめの細かい分析をしたうえでひな型をつくられたというのは、今後のスポーツ界における大きな財産になりそうな予感がします。変化の激しい時代ですので、その都度アジャストする必要性も出てきそうですが、少なくとも何をどう考えるのかという根っこの部分として今後も本書のアプローチは必要になりそうです。
 私個人としては経営哲学みたいなことには触れたこともありましたが、本書は人文科学としての経営学だと思います。スポーツビジネスに限らず経営者目線からの分析の仕方やシステムの構築など、あらゆるジャンルの経営にも役立つお話がいっぱいありました。
(辻田 浩志)

出版元:晃洋書房

(掲載日:2023-06-16)

タグ:スポーツビジネス スポーツマネジメント 経営  
カテゴリ スポーツビジネス
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高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意
大利 実

 野球を見ていると「投げた」「打った」というわかりやすいプレーの結果を追いがちですが、そういう見方をしていると勝敗に一喜一憂してしまうような気がします。もちろんそれも野球の重要な要素ではありますが、本書を読んで思ったのは、あまり注目されない走塁にも野球の醍醐味があったことです。これは観戦する側の感想ですが、実際にプレーなさっている方にとっては心が震えるほど野球の難しさと面白さに触れられるのではないでしょうか。
 最近はこういった表現をあまり耳にしなくなりましたが、「走塁の虎の巻」と呼べる一冊です。塁間を駆け抜けるのに必要なのは足の速さ。そう思っていましたが、ボールを打った瞬間からバッターはランナーとなるという言葉はまさにその通りであって、足が速かろうと遅かろうとランナーである以上走らなければなりません。ホームランを除いては、いくら打っても塁間を走りホームに戻ってこないと点は入りません。ここを原点とする以上、走塁を軽んじることはできません。
 本書の内容は高校野球の監督たちが走塁についてそれぞれの考えを述べておられますが、走力を高めるための練習法もあれば、走塁技術の解説もあります。話はそこにとどまらず野球観であったり、心理戦であったり、相手に対しての観察眼であったり、野球の神髄とも言えそうなお話もあったりして、あまり詳しくない私でもドキドキするような大切なお話もあります。そういった深いお話に感動しながら読み進めると、最後に登場するのは高校野球ではなく中日ドラゴンズの荒木雅博コーチ。言わずと知れた往年の名プレイヤーです。現役時代、盗塁するときはバッターやキャッチャーの方を見ず、キャッチャーのミットの捕球音で状況を判断し、ショートを守っている選手の目線や動きで打球の行方を判断したそうです。どこまで奥行きが深いのでしょう。

(辻田 浩志)

出版元:カンゼン

(掲載日:2023-06-30)

タグ:野球 走塁  
カテゴリ 指導
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日本バッティングセンター考
カルロス 矢吹

 題材にもいろいろな切り口があるもんだと思いました。私のような昭和の人間にとって、バッティングセンターは身近な存在。どことなく牧歌的な雰囲気だろうと読み始めて最初に登場するのは、東日本大震災で被災した方のストーリー。予想に反してヘヴィーな出だしに心が引き締まります。そう、客の立場だった私には昔懐かしいレジャーにしかすぎませんが、事業を立ち上げ営業される方にとっては一世一代のビジネスだということに気づかされました。日本中、北から南まで多くのバッティングセンターを取材されて成り立ちや時代時代の運営を中心に物語は進みます。どちらかといえばバッティングセンターを舞台とした人間のドラマといった方が的確かもしれません。
 時代は昭和の中頃、終戦から少し時間がたって落ち着くと、国民はレジャーや娯楽を楽しむ余裕を持つようになりました。そんなとき長嶋茂雄が巨人軍に入団し9連覇を成し遂げ野球が盛んになります。横綱大鵬や力道山などが国民のヒーローとなったのは敗戦が影を落とした国民の心のよりどころだったからかもしれません。彼らの強さに憧れたのも自然な流れだったのでしょう。観戦するだけではなく自分たちもプレイすることで野球熱は次第に高まりました。何といっても打撃は野球の華。本来なら球場に行って選手が集まって用具があって初めてバッティングができますが、バッティングセンターに行けば気軽に楽しめる。楽しめたかどうかは腕次第ではありますが、お小遣い程度のお金で体験できるバッティングセンターが流行らないわけがありません。
 日本最初のピッチングマシーンが紹介されていて、カタパルト式のマシーンは中日ドラゴンズが使っていたそうです。話はそれますが「巨人の星」で大リーグボール1号を破るためドラゴンズのアームストロング・オズマがそのマシーンで特訓をしていたのを思い出しました。
 バッティングセンターの歴史だけだったらたぶんのめり込まなかったはずです。そこに人間のドラマが綾なす物語として進行します。バッティングセンターで練習した野球少年がプロ入りしたとかいうエピソードは野球少年の心をくすぐります。今風にいえば「聖地」ってところでしょうか。イチローが練習したバッティングセンターなんて、私でも行ってみたいです。
 昭和で大ブームになった球技といえばボウリング。70年代初期はディズニーランドの人気アトラクション並みの待ち時間だったといえばご理解いただけるでしょうか。そんなボウリング場もオイルショック後に激減し、バッティングセンターに変わっていったそうです。かつてよく行っていたバッティングセンターもホームセンターになっています。全国で軒数が減ったのは人気スポーツの多様化ゆえ。それでも地元には一軒だけバッティングセンターが残っています。十数年前に息子を連れていって以来ご無沙汰ですが、十年後くらいには孫を連れていくことにしましょう。本書を読んでみて、ふとそう思いました。
(辻田 浩志)

出版元:双葉社

(掲載日:2023-07-26)

タグ:バッティングセンター 
カテゴリ その他
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MRIで理解するスポーツ外傷・障害
安達 伸生

 本書を紹介するにあたり、序文から抜粋させていただきます。「本書はスポーツ診療に携わる医師やメディカルスタッフを対象に、スポーツによる運動器外傷・障害のMRI診断・読影ポイントを解説したものです。基本的な撮影条件、撮像方向、正常組織像の見え方を示したうえで、疾患・病態を解説し、さらにはMRIが必要な状況・タイミング・撮像方法と肢位、読影のポイント・注意点、鑑別診断、MRIの意義と限界を解説した」ものだと書かれています。
 実際に読んでみるとMRIを使われる人にとってわかりやすい解説であり、なおかつ注意すべきポイントがしっかりと記されているようです。MRIに縁のない私でも必要なポイントが押さえられているだろうと感じることができます。
 ただ本書の対象外の立場である私にとっても非常に興味深く読めたのは、よく耳にするスポーツ障害が具体的にどこがどうなっているのかということをMRIの画像を見ることでより理解が深まったからにほかなりません。さらには治療経過の情報に触れられる機会はあまりありませんので、治癒までのプロセスがうっすらとわかればその後のリハビリともつながりそうな感じがしました。
 わからないところは飛ばして読めば、今まで触れることのなかった知識は得られそうです。まっとうな読み方ではありませんが、医師やメディカルスタッフでなくとも覚えておけば役に立ちそうな情報は満載です。正直言ってちょっと背伸びして読んだわけですが、興味深い一冊であることは間違いありません。
(辻田 浩志)

出版元:南江堂

(掲載日:2023-08-04)

タグ:MRI 
カテゴリ スポーツ医学
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問いかけの作法
安斎 勇樹

 読み始めると冒頭に「誰も意見を述べないお通夜ミーティング」というくだりがありました。「自由に意見を言ってください」「アイデアを出してください」とリーダーが呼びかけてもシーンと静まり返ったまま。多くの方が「あるある」と思われたことでしょう。私自身もご多分に漏れずこういったミーティングや会議を経験しています。私の場合、最悪だったのはリーダーだったことも多く、こういう事態を想定して自分自身が用意していたアイデアをご披露し、反対意見もなくシャンシャンで終わったものでした。これってミーティングでも会議でもなくリーダーの一人よがり以外の何ものでもありません。冒頭から昔の経験を否定されたように打ちひしがれながら、それならどうすりゃいいんですか? とばかりに読み進めていきました。
 本書の原点がファクトリー型ではなく、ワークショップ型の組織をつくり、構成員全体からのボトムアップによる意見交換をしようというのが主題となります。ファクトリー型とはトップダウンの組織で定型的なモノづくりをしようとする前時代的な組織ととらえ、ワークショップ型はトップの理念と現場の問題点をすり合わせながらモノづくりをする組織と説明してもいいかもしれません。
 筆者は一概にファクトリー型がダメでワークショップ型を推奨しているわけではないことを留意すべきです。でないとこの後展開されるワークショップ型の組織の必要なノウハウが膨大なので誤った印象を受けかねません。これからの時代どんな変化が待ち受けているかもしれない不確定な社会の中、従来通りのファクトリー型の組織では変化に耐えられないとの懸念に対抗すべくファクトリー型の組織を提案しているという前提は忘れてはいけません。
 筆者がいうところの「孤軍奮闘の悪循環」というのが冒頭にお話しした「ありがちなパターン」なんですが、ボトムアップのファクトリー型のミーティングをするために「問いかけ」をすることによりメンバーの考えを引きだそうとしています。「忌憚のないご意見を」と言われても範囲が広すぎるので、逆に論点を絞った問いかけをすることでメンバー個々の意見を引きだしやすくするというものです。そういってみれば簡単そうに見えますが、「問いかけ」に対する筆者のスキルの高さに圧倒されたのが正直な話。本書を丸暗記して同じことを試みようとしてもミーティングはメンバーや議題などそのときそのときで変わるはずで一から通用するとも考えにくいのです。
 私なりに本書を読んでみて筆者のノウハウを実行するために必要なものを考えてみたんですが「俯瞰力」「問題抽出能力」「ユーモア」「観察力」「抽象化と一般化」「状況を整理する力」「自由な発想」「想像力」などいろんな能力が必要だと感じました。
 だから「絵に描いた餅」とあきらめるのも選択肢の一つですが、やってみなきゃ何ごともできないのは世の中の理。物まねでも猿真似でもやってみて体験してみたところからしか筆者の言ってることを体感できないでしょう。別にこの本に書いてある方法がすべてではなく、むしろ筆者の体験談が書かれているに過ぎないと感じたらもっと気楽に実践できるかもしれません。そのうちにそれぞれのオリジナルのノウハウが生まれてきてこそ、本当のワークショップ型になったといえるのではないでしょうか。
(辻田 浩志)

出版元:ディスカヴァー・トゥエンティワン

(掲載日:2023-08-28)

タグ:チームビルディング 
カテゴリ その他
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B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史
大島 和人

 本書は近年のプロバスケットボールリーグの変遷が書かれたドキュメントです。さほどバスケットボールに詳しくなかった私でもリーグが分裂し、そこからの対立により国際バスケットボール連盟(FIBA)から国際資格停止処分を受けるかもしれないといった問題があったことは記憶にありました。「内紛」「主導権争い」といえばその通りなんですが、本書を読むことでその背景であったりスポーツの在り方の変化、さらには90年代のバブル崩壊が絡んでいることがわかり、単なるお家騒動として片づけられる問題ではなかったことに気づきました。本書で記されるバスケットボールリーグの内紛も、遡ればオリンピックにおけるアマチュアリズムの変化が根底にあるように思えました。今日オリンピックにはプロのアスリートが出場することに違和感を覚えなくなりましたが、80年代まではプロ・アマの論争がありました。日本においても一部のスポーツを除いては企業がクラブ活動みたいな体裁としてチームを保有し、少なくともスポーツそのもので利潤を上げるという形態ではありませんでした。そのころはオリンピックに準じた感じでアマチュアスポーツとしてバスケットボールが当たり前だと思っていましたが、チームを保有する企業がバブル崩壊とともにスポーツに資金を投じる余裕がなくなり雲行きが変わります。
 本書ではそこのところの事情はサラッと触れられている程度でしたが、問題の背景は、それまで安泰だったチームがプロスポーツとして利益を上げることで存続する必要が生まれたことだと感じました。NBLとbjリーグが悪者でB.LEAGUEを誕生させた人たちが正しいという単純な図式ではなかったことを踏まえて読めば、これまで企業のクラブチームとして運営してきたNBLと純然たるプロリーグを作ろうとしたbjリーグの資金力の乏しさ、それぞれの問題点のぶつかり合いが本書の紛争を生んだのではないかと考えられそうです。そこにFIBAからの条件付き処分があったことでB.LEAGUEの誕生を加速させたことは間違いなさそうです。
 本書ではプロリーグ誕生のロールモデルとして描かれていますが、むしろ今後の運営に注目したいものです。サッカーやバスケットボールやバレーボールなど、スポーツがビジネスとして変革をとげました。これからはどうやって軌道に乗せていくかで未来のスポーツ界が変わるでしょう。
(辻田 浩志)

出版元:日経BP

(掲載日:2023-10-20)

タグ:バスケットボール 
カテゴリ その他
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言語と呪術
井筒 俊彦 安藤 礼二 小野 純一

 言語とは情報伝達のツールである。今の時代に「呪術」なんて漫画や小説などのフィクションの中にしか存在しない。そういう考え方をされる方も少なくないかもしれません。実際私自身も本書を手に取ったとき「怪しげな本」という第一印象を持ちました。これを偏見といいます。読んでみると大真面目に言語の呪術性を説かれています。帯には「言語は論理(ロジック)であるとともに呪術(マジック)である」と書かれていますが論理面ばかりが目につく昨今、言語のルーツをたどっていけば呪術としての側面があり、我々が気づかないだけで、というよりもむしろ当たり前になりすぎて呪術としての側面が見えなくなっているだけであると筆者は述べます。ここで正しい理解の障壁となるのはご大層な儀式が呪術であるという認識だと思います。さらに科学の発展により昔の呪術的な儀式は否定されていることも筆者の意見に耳を傾けることの邪魔になっているかもしれません。
 もともと言語は自分の願いを表象することが最初の目的なのでしょう。赤ん坊が「まんま」と言ったりするのも食べて命を長らえたいという願いであり、自らの希望を伝える手段を呪術と捉えるのであれば理解も容易になることでしょう。今の時代においても文化の中に取り込まれた呪術は存在します。大安や仏滅などの六曜もいまだに書かれたカレンダーがありますし、ごはんを食べるときに「いただきます」というのも立派な呪術であるという目線があれば本書をしっかりと読めるはずです。そして筆者の目的は宗教的なものを肯定するのではなく言語を哲学するところにあるのだと確信します。
 本書の肝は言語として発したワードには、発信者の心にある「何か」を聞き手の心の中に呼び起こすと言われ、その「何か」を「内包」と称し研究の対象としているところにあります。言葉の中には発信者のイメージや経験あるいは思想などが含まれたものとしている点に、心であったり魂という部分までもが言葉だと考えることで呪術性の正当性を裏付けています。本来人の心の中にあるものなんて容易にわかるものではないはずなんですが、4つの要素に整理して考察を進めます。「指示的」「直観的」「情緒的」「構造的」と発信者の心の裡にある要素を分類しています。4つの要素に対する説明も様々なジャンルの文献を引用しながら進められていますので、筆者個人の意見という感じではなく客観性を感じました。
 本書は「英文著作翻訳」となっておりますが、翻訳者の言葉の選択もすごく繊細な印象を持ちました。
(辻田 浩志)

出版元:慶應義塾大学出版会

(掲載日:2024-02-06)

タグ:言語  
カテゴリ その他
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オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり
菊地 高弘

 野球というスポーツで話題なのは大谷翔平選手でしょう。ドジャーズに移籍して今まで以上の活躍が期待され、日本のみならずアメリカで人々から称賛されています。お国柄といいますか、アメリカでは人種や出身地にかかわらず活躍に見合った評価を受けます。MLBで活躍した外国人選手は今の時代でも「助っ人」と呼ぶ人もいて、正式なチームの一員であるにもかかわらず一線が引かれることもあります。
 アマチュア野球においても他府県から入学した選手たちは「ガイジン部隊」と呼ばれることもあります。本書は、高校野球でもしばしば問題となる他府県からの野球留学生とその学校のドキュメントが描かれた本です。野球留学を擁護するでもなく、そして県外の選手を集めたチームや高校野球の現状を批判するでもなく、淡々と事実だけが書かれています。しかも表面上のきれいごとだけではなく、選手や学校側の現実にも踏み込まれていますので偏りは感じられません。
 読者の判断に委ねるためにあえて筆者の主観を伏せているのではないのかと思うくらい、事実のみが書かれている、というのが私個人の感想です。他のスポーツに目を向けているとそれぞれのスポーツをよりよい環境でやりたいために他府県に行く学生を何人か見てきましたが、彼らは「ガイジン」といわれることはありません。高校野球だけはこの問題が話題になるのは、甲子園の大会が郷土というものを背負わされているからにほかなりません。高校生のクラブ活動とは違った目線で見られているからだと思います。そしてそれが「純粋」であったり「神聖」という価値がひっついてくると話は余計にややこしくなってくるのだと思います。大谷選手やイチロー選手らがMLBで活躍すると、チームや試合結果そっちのけで彼らのプレーばかりが報道で取り上げられるのは、「ガイジン部隊」問題の裏返しなんじゃないかと思っています。
 私の主観はそれくらいにしておいて、読者がそれぞれの感想を持つにはほどよいバランスの情報が本書には記されています。そしてもう一つ、本書の大きな特徴はリアルさだと思います。巨人の坂本選手、ドジャーズの大谷選手、元阪神の北条選手、今阪神で売り出し中の野口選手や川原選手など野球好きなら聞いたことがある名前が頻繁に登場します。そして彼らの高校時代の活躍にも触れられていますので、彼らのプレーを思い出しながら裏舞台をこっそりとのぞくワクワク感もあります。数年前に多くの野球留学生で甲子園に出た秀岳館の元監督鍛治舎功さん(現県立岐阜商監督)の核心を突いたお話も当事者ならでは。
「高校野球はこうあるべき」という議論をする前に当事者の実際のところを見ておく必要があります。
(辻田 浩志)

出版元:インプレス

(掲載日:2024-03-08)

タグ:高校野球 
カテゴリ スポーツライティング
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Q&Aですらすらわかる 体内時計健康法 時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康
田原 優 柴田 重信

 以前ヨーロッパに行ったとき、滞在中はもちろん帰国してからも時差ぼけに悩まされ、ひと月ほど身体のリズムがおかしくなりました。「体内時計」という言葉は何となく知っていても実際に体験してみて初めてその存在感に気づかされました。多くの人が「体内時計」というものをご存じでしょうが、具体的なことについてはあまり知られていないのではないかと思います。「時計」と名付けられても体内に機械があるわけではなく、身体の様々な機能にリズムが刻まれているくらいの認識できちんと説明できるほど体内時計のことを知っているわけではありません。
 体内時計のことをあまり知らない私でも「Q&A方式」でいろいろなポイントから解説されているのでとても読みやすい構成になっていました。まず「わからない」ことが前提としてクエスチョンがあり、次に短い結論が述べられています。そこからさらに踏み込んだ難しい解説があります。実に親切な書き方です。興味を持ちそうなクエスチョンがあっても専門的な難しい答えをぶつけられて消化不良になってしまい、逆に興味が損なわれてしまう懸念もありますが、アンサーが実に簡潔で質問と答えがスッポリと頭の中に納まってしまう感じが本書の一番いいところだと思います。そこからさらに興味を持てば詳しい解説を読むことができるので読者の興味や知識によって読み分けることが可能です。様々な研究データに基づく解説は正直難解ではありますが、あらかじめ結論がわかっているのでなんとなくわかったような気になるのがありがたかったです。
「腹時計」「健康・寿命との関係」「メラトニン」「食事との関係」「カフェイン」「肥満」「脂肪燃焼」「ストレス」「セロトニン」「睡眠薬」「アルコール」「機能性食品」など、しっかり勉強したいというよりちょっと読んでみたいと思わせるトピックスの数々。腰を据えてしっかりと学びたいという方がお読みになってもいいですが、気軽に興味があるところだけお読みになっても面白い本だと思います。
 本書のタイトルの通り、体内時計の知識を活かして自分の生活を省みれば変えてみないといけないこともたくさんありました。試してみる価値は十分ありそうです。


(辻田 浩志)

出版元:杏林書院

(掲載日:2024-03-12)

タグ:健康 体内時計 
カテゴリ 生命科学
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トップアスリートの指導者に学ぶ
阿部 肇 早川 公康

 トップアスリートは選手の素養はもちろんですが、彼らを育てる指導者の存在を抜きにして語ることはできないと思います。練習や考え方や身体づくりなど何ひとつ欠けてもトップアスリートへの道のりは遠くなるからです。トップアスリート本人にスポットライトが当たるのは当然のことですが、選手を導くための方法論に興味を持たれる方は少なくないはずです。ところが指導者が登場される場面ってアスリートのことを語る第三者的な立ち位置が多く、指導者自身のことを紹介されることは比較的少ないと感じています。成果を挙げたのはアスリートですからニーズでいえばそうなるのでしょうが、本書においては監督が主役となります。
 何か特別な指導法があるんじゃないかと期待しながら読んでいたのですが、結論から言えばできることのすべてに信念をもって根気よく続けられたというのが印象に残りました。逆に言えば「コツ」みたいなものをマスターすればできそうな簡単なものではなく、一つ一つのやるべきことをしっかりと丁寧にこなしていくというのはアスリートと同じで最も難しいことなのかもしれません。ただ読者それぞれの立場において本書に書かれている根っこの部分は取り入れることができるという点においては多くの方にお読みいただく価値はあると思います。
 仙台大学漕艇部監督の阿部肇(ただし)氏が主役となりインタビュー形式で話は進みます。内容に関してひと言でまとめるならば「心・技・体」について具体的な話をされていますが、今の時代にアップデートされた「心・技・体」と申し上げておきたいです。むかしがどうのこうのというのではなくスポーツ医科学に裏づけられた指導法がトップアスリートを育てる最善の方法であり、阿部監督だけではなく多くのスポーツでトップアスリートを育てている指導者や組織では、進化し続けているスポーツ医科学に基づいた指導をされていて、そうでなければ結果が残らないというお話もありました。とくに食事に関する話題が多かったのですが、今の指導者はそれぞれの専門家の知識を基に研究されているのがうかがえます。もちろんご自身の経験も重要な要素ではありますが、それだけでは勝てないというのが共通認識のようです。
 心の部分でも新しい時代の精神論というとらえ方ができます。「スポーツは芸術」というセリフもありましたが、スポーツを愛しスポーツを楽しむことから入り、だからこその猛練習って素敵だと思いませんか? こういう精神論ならトップアスリートのみならずいろんなジャンルの人に当てはまりそうな気がします。年月をかけてこういう考え方が広がっていけばスポーツがどんどん輝いたものになりそうです。
(辻田 浩志)

出版元:現代図書

(掲載日:2024-03-14)

タグ:コーチング 栄養 
カテゴリ 指導
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著者
Mel Boring American Medical Association C.B. Mordan 島沢 優子 日本スタビライゼーション協会 足利工業大学・健康科学研究室 銅冶 英雄Adrian WealeAlan GoldbergAndrea BatesAndrew BielAnne KeilAviva L.E. Smith UenoBernd FalkenbergBoris I.PrilutskyBrad Alan LewisBrad WalkerCarl PetersenCarole B. LewisCarole B.LewisCaroline Corning CreagerChad StarkeyChampagne,DelightCharland,JeffChartrand,JudyChris JarmeyClive BrewerDaniel LewindonDanish,StevenDavid A. WinterDavid BorgenichtDavid E. MartinDavid EpsteinDavid GrandDavid H. FukudaDavid H. PerrinDavid JoyceDavid SumpterDavies,George J.Digby, MarenaDonald A. ChuDonald T KirkendallEddie JonesElizabeth Best-MartiniEllenbecker,Todd S.Everett AabergF. バッカーFrank BakkerG. Gregory HaffG.D.ReinholtzGeorge BrettGray CookGregory D. MyerH・ミンツバーグIñigo MujikaJ.G.P.WilliamsJ.W.SchraderJWS「女性スポーツ白書」作成プロジェクトJacqui Greene HaasJamJames C. RadcliffeJames StudarusJari YlinenJeanne Marie LaskasJeff BenedictJeff CharlandJeff LibengoodJeff RyanJennifer Mather SaulJerry LynchJiří DvořákJohn GibbonsJonathan PrinceJoseph C. MaroonJoshua PivenJulian E. BailesJ・ウィルモアKahleKarim KhanKarin WiebenKim A. Botenhagen-DiGenovaKim A.Botenhagen-DiGenovaL.P.マトヴェーエフLawrence M.ElsonLeon ChaitowLeonhardtLeslie DendyLorne GoldenbergM. デュランM.J.SmahaMarc DurandMarilyn MoffatMark PerrymanMark R. LovellMark VerstegenMattyMcAtee,Robert E.Megan HineMelvin H. WilliamsMichael GleesonMichael J. AlterMiguel Angel SantosMurphy,ShaneM・ポラックNPO法人日本ライフセービング協会Nadia ComaneciNational Strength and Conditioning AssociationNina NittingerNorm HansonOg MandinoP.V.カルポビッチPOST編集部Pat ManocchiaPaul L. GreenhaffPete WilliamsPeter BruknerPeter N. CoePeter TwistPeter WoodPetitpas,Al.PlatzerR. ザイラーR.H.エプスタインR.J.CareyR.N.シンガーRainer MartensRaymond M. NakamuraRein TideiksaarRene CaillietRichard BrennanRichard GoldRobert C. FarentinosRobert E. McAteeRobert MoorRobert S.BehnkeRoger W.EarleRoland SeilerRon MaughanRuben J. GuzmanS. ビドルS.T.FleckSAGE ROUNTREESander L. GilmanSandy FritzSharon MoalemShephard,Roy J.Soccer clinicSports Graphic NumberStephen KieslingSteven J. FleckStuart BiddleSue HitzmannS・パリッシュS・フォックスTerease, AmandaThomas R.BaechleThomas W. MyersThor GotaasTil LuchauTrevor WestonTudor O. BompaVladimir M. ZatsiorskyVladimir M. ZatsiorskyVáclav DvořákW.E.シニングW.J.KraemerWilliam J. KraemerWynn KapitY. ヴァンデン‐オウェールYves Vanden Auweele「運動器の10年」日本委員会いとう やまねかわむら ふゆみけいはんな社会的知能発生学研究会ふくい かなめまつばら けいみづき 水脈みんなのスポーツ全国研究会わたなべ ゆうこアタナシアス テルジスアタナシアス・テルジスアダム フィリッピーアテーナプロジェクトアメリカスポーツ医学会アメリカスポーツ医学協会アメリカ医師会アレックス・ハッチンソンアンゲリカ・シュテフェリング エルマー・T・ポイカー ヨルグ・ケストナーアンドリュー ブレイクアンドリュー・ゴードンアンドリュー・ゾッリアンドリュー・ビエルアンバート・トッシーアン・ケイルアン・マリー・ヒーリーイチロー・カワチイヴ・ジネストウイリアム ウェザリーウサイン・ボルトウドー アルブルエディー・ジョーンズエドワード・フォックスエバレット アーバーグエリザベス ノートン ラズリーカイ・リープヘンカミール・グーリーイェヴ デニス・ブーキンカルロス 矢吹カレン・クリッピンジャーカーチ・キライカール・マクガウンキャロリン・S・スミスキャロル・A.オ-チスクラフト・エヴィング商會クリス カーマイケルクリス ジャ-メイクリストフ・プノーグレン・コードーザケイトリン・リンチケニー マクゴニガルケネス・H・クーパーケリー・スターレットケン ボブサクストンゲルハルト レビンサイモン・ウィクラーサカイクサンキュータツオサンダー・L. ギルマンサンドラ・K・アンダーソンシェリル・ベルクマン・ドゥルーシルヴィア ラックマンジェア・イエイツジェイ マイクスジェイソン・R・カープジェイムズ・カージェフ ライベングッドジェフ・マリージェリー・リンチジェームス・M・フォックスジェームス・T・アラダイスジェームズ アマディオジェームズ・アマディオジェーン・ジョンソンジェ-ン・パタ-ソンジム・E. レーヤージャン=マリ・ルブランジュリエット・スターレットジョセフ・H・ピラティスジョン エンタインジョン・スミスジョン・フィルビンジル・ボルト・テイラースタジオタッククリエイティブスティーヴン・ストロガッツステファン 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書評者
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月刊トレーニング・ジャーナル(16)
月刊トレーニング・ジャーナル編集部(758)
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松本 圭祐(3)
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梅澤 恵利子(1)
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水田 陽(6)
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渡邊 秀幹(1)
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鈴木 健大(6)
長谷川 大輔(3)
長谷川 智憲(40)
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阿部 拓馬(1)
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青木 美帆(1)
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